疾患解説
フリガナ | ワイルビョウ |
別名 | 黄疸出血性レプトスピラ症 |
臓器区分 | 感染性疾患 |
英疾患名 | Weil disease |
ICD10 | A27.9 |
疾患の概念 | ネズミ、イヌ、ウシ、ブタなどの保菌宿主の尿で汚染された汚水や食物から経皮的に感染する人畜共通感染症で、わが国では沖縄が主要な汚染地区である。90%は軽症で自然治癒するが、10%は黄疸を伴う致死的な重症型(Weil病)として発症する。Weil病は多臓器不全を合併しやすく死亡率は5~40%と高い。 |
診断の手掛 | ネズミ、イヌなどの尿に汚染された物質に接触後、5~10日の潜伏期を経て突然39℃以上の悪寒戦慄を伴った高熱、頭痛、筋肉痛が出現した患者を診たら本症を疑う。これらの症状は、4~9日続き、その後解熱して免疫期に入るニ相性を示す。Weil病は、レプトスピラ症の重症型で、血管内溶血による黄疸、高窒素血症、貧血、意識障害、持続的発熱が見られる。 |
主訴 |
意識障害|Memory impaiment 黄疸|Jaundice 嘔吐|Vomiting 悪寒戦慄|Chill with shivening 悪心|Nausea 喀血|Hemoptysis 筋肉痛|Myalgia 稽留熱|Continued fever 結膜充血|Conjunctival injection 下血|Melena 高熱|High fever/Hyperthermia 呼吸困難|Dyspnea 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 衰弱感|Weakness 頭痛|Headache/Cephalalgia 性器出血|Genital bleeding 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 蛋白尿|Proteinuria 吐血|Hematemesis 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 腓腹筋痛|Calfpain 乏尿|Oliguria 右季肋部痛|Pain in the right hypochondrium/Right Hypochondralgia 無尿|Anuria |
鑑別疾患 |
悪性リンパ腫|Malignant Lymphoma インフルエンザ|Influenza 黄熱病|Yellow Fever 肝炎 急性胆嚢炎|Acute Cholecystitis 急性溶血性貧血 膠原病 心筋炎|Myocarditis 腎症候性出血熱 腎不全 髄膜炎|Meningitis 胆嚢炎 腸チフス|Typhoid Fever 敗血症|Sepsis パラチフス マラリア|Malaria リウマチ熱|Rheumatic Fever |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S] Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Bilirubin-Direct|直接ビリルビン/抱合型ビリルビン [/S] Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S] Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S] Creatinine|クレアチニン [/S] Erythrocytes|赤血球数 [/U] Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Leukocytes|白血球数 [/B, /B, /U] Lymphocytes|リンパ球 [/CSF] Neutrophils|好中球 [/B] Platelets|血小板 [/B] Potassium|カリウム [/S] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF, /U] Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] VDRL|性病研究所梅毒検査法/VDRL法 [Positive/S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] γ-Globulin|γ-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
Agglutination Tests [Positive/S] Antibody Titer [/S] Casts|円柱 [/U] Cells [/CSF] Complement Fixation [/S] Lactate|乳酸/ラクテート [/B] Leptospira Antibody|レプトスピラ抗体/抗レプトスピラ抗体 [Positive/S] Occult Blood|潜血反応(便)/グアヤック法/o-トリジン法/ラテックス凝集法 [/F] Urobilinogen|ウロビリノゲン定性(尿) [/U] |
関連する検査の読み方 |
【CBC】 白血球は10,000~30,000/μL程度に増加するが、黄疸を伴う重症患者では50,000/μLを超えることがある。血小板は基準範囲内にとどまる。 【ESR】 感染第1週で50mm以上亢進する。 【肝機能検査】 AST、ALP、ビリルビンが上昇する。ASTは200U/L未満の上昇である。ビリルビンは通常20mg/dL未満であるが、重度の感染では40mg/dLに達することもある。 【UN】 多くの症例で50~100mg/dLと著しく増加し、150mg/dL以上は予後不良である。 【クレアチニン】 50%の患者で、1.5mg/dL以上の上昇が見られる。 【CK】 50%の患者で発症1週にCKの上昇が見られ、この所見はウイルス性肝炎との鑑別に有用である。 【髄液一般検査】 細胞数は10~1,000/μLで、単核細胞が優勢である。ブドウ糖は基準範囲内、蛋白は100mg/dL未満である。 【レプトスピラ抗体】 顕微鏡下凝集試験(MAT)を行う。ペア血清で4倍以上の抗体価の増加を認める。レプトスピラ症を発症するレプトスピラは主としてネズミの尿を介して皮膚感染し、悪寒・戦慄から出血・黄疸・髄膜炎まで多彩な症状を呈する。レプトスピラ症はWeil病、秋疫A・B・Cレプトスピラ、カニコーラレプトスピラの5種あるが、Weil病以外は軽症である。この抗体検査は5種の抗体をセットで測定出来る。臨床的には畜産業者、調理師、水田などでの農作業従事者、下水処理業者などが急性の発熱、筋肉痛、出血、黄疸などを訴えた場合に検査を行う。 【血液レプトスピラ培養】 レプトスピラ血症は発病後7日間は持続するので、この間に分離培養する。 【尿レプトスピラ培養】 感染2週間後には尿から検出される。 【IgM-EIA】 臨牀症状がまだ明確でない発症2日後でも陽性となるため、初期診断に特に有用である。感度特異度ともにきわめて高い。 【PCR】 血液、尿、脳脊髄液、眼房水中のレプトスピラDNAを検出できる。病初期に陽性となり感度、特異度ともに高い。 【尿一般検査】 蛋白尿を認める。沈査で赤血球、白血球、各種円柱がみられる。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査 |