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疾患解説

フリガナ シンセイタケツショウ
別名 真性赤血球増加症
原発性赤血球増多症
臓器区分 血液・造血器疾患
英疾患名 Polycythemia Rubra Vera(PV)
ICD10 D45
疾患の概念 特発性の慢性骨髄増殖性疾患で、造血幹細胞の腫瘍性増殖により、主として赤血球量の絶対的増加を来すと同時に白血球や血小板も増加する。血液量増加と高粘稠度により、血栓症のリスクが高まる。稀に急性白血病や骨髄線維症への転化がみられる。ほぼ全例にJAK2遺伝子の点変異が認められ、発症に関与していると考えられている。中年以降の男性(約60%)に好発する。PVは、エリスロポエチン濃度と無関係に赤血球産生が進行し、脾臓、肝臓およびその他の造血能を有する部位で髄外造血が見られることがある。血液量は増加し、過粘稠が生じ、血栓症が生じやすい。血栓症は、殆どの血管で発生する可能性があり、脳卒中、一過性脳虚血発作、深部静脈血栓症、心筋梗塞、網膜動脈閉塞、網膜静脈閉塞、脾梗塞またはバッド-キアリ症候群を引き起こす。血小板の機能異常により出血増加の素因となる場合がある。細胞回転の亢進するので、高尿酸血症がみられ痛風や尿酸腎結石のリスクをが高まる。全ての患者にJAK2 V617F突然変異がみ見られるが、他にも疾患に起因する突然変異がほぼ確実に1つ以上存在する。これらの突然変異は、JAK2タンパクの持続的活性化をもたらし、エリスロポエチン濃度と無関係に過剰な血球産生を引き起こす。
診断の手掛 血液量増加と高粘度による脱力感、頭痛、ふらつき、視力障害、易疲労感、呼吸困難が主な症状だが、入浴後の掻痒感も大切な所見である。また、鼻出血などの出血傾向や血栓形成による症状にも注意する。顔面が赤くなり、網膜静脈の充血、手掌および足の発赤、熱感、疼痛、指の虚血などにも注意する。肝腫大と75%を超す患者で脾腫がみ見られるので見逃さない。臨床的な判定基準は1.赤血球容積の上昇 2.動脈血酸素分圧は正常 3.脾腫 4.脾腫のない場合は白血球増加症と血小板増加症である。
【診断基準:2007年WHO】
大基準:1.以下のうち1つ以上を含む赤血球量の増加所見 a)ヘモグロビンが男性で18.5g/dL超過、女性で16.5g/dL超過 b)ヘモグロビンまたはヘマトクリットが年齢、性別および居住地の高度に対する測定法特異的基準範囲の第99パーセンタイル超過 c)患者のベースライン値から2g/dL以上の増加が確認され持続しており、鉄欠乏症の是正により説明できない場合は、ヘモグロビンが男性で17g/dL超過、女性で15g/dL超過 d)赤血球量増加が正常予測平均値上限を25%上回る 2.AK2 617VFまたはJAK2 エクソン12の突然変異同様な突然変異の存在
小基準:1.骨髄生検で、3つの血球系の増加(汎骨髄症)を伴う年齢に対して過形成ならびに赤血球、顆粒球および巨核球の著しい増殖が認められる 2.血清エリスロポエチン濃度が基準正常範囲を下回る 3.In vitroにおける内因性赤血球コロニー形成
主訴 赤ら顔|Red face
かゆみ|Itching
肝腫大|Hepatomegaly
呼吸困難|Dyspnea
紫斑|Purpura
出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis
視力障害|Blurred vision/Visual impairment
耳鳴|Tinnitus
頭重感|Dull headache
頭痛|Headache/Cephalalgia
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
体重減少|Weight loss
脱力感|Weekness
知覚障害|Esthesia disorder/Sensitivity disorder
粘膜潮紅|Flushing of mucosa
発汗異常|Dyshidrosis/Paridrosis
皮下出血|Bruise/Subcutaneous bleeding
脾腫|Splenomegaly
皮膚潮紅|Skin flush/Rubedo
鼻出血|Nosebleed/Nasal hemorrhage/Epistaxis
めまい|Dizziness
やせ|Weight loss
鑑別疾患 高血圧症|Hypertension
特発性骨髄線維症
相対的赤血球増加症
二次性赤血球増加症
本態性血小板血症|Essential Thrombocythemia(ET)
慢性骨髄性白血病|Chronic Myeloid Leukemia(CLM)
先端紅痛症
一過性脳虚血発作|Transient Ischemic Attack(TIA)
深部静脈血栓症|Deep Venous Thrombosis(DVT)
心筋梗塞
脳卒中|Apoplexy/Stroke
網膜動脈閉塞
網膜静脈閉塞
脾梗塞
Budd-Chiari症候群
痛風|Gout
腎結石
スクリーニング検査 Albumin|アルブミン [/U]
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/WBC]
Basophils|好塩基球 [/B, /Bone Marrow]
Bilirubin-Total|総ビリルビン/ビリルビン [/S]
Calcium|カルシウム [/S]
Eosinophils|好酸球 [/B, /Bone Marrow]
Erythrocytes|赤血球数 [/B]
Erythrocyte Sedimentation Rate|赤血球沈降速度 [/B]
Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B]
Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S]
Immunoglobulin M|免疫グロブリンM/マクログロブリン [/S]
Iron|鉄/血清鉄 [/Bone Marrow, /S]
Leukocytes|白血球数 [/B]
Neutrophils|好中球 [/B]
Platelets|血小板 [/B]
Potassium|カリウム [/S]
Uric Acid|尿酸 [/S, /U]
異常値を示す検査 Anisocytes|赤血球大小不同 [/B]
Antithrombin III|アンチトロンビンIII/アンチトロンビン [/P]
Antithrombin III Activity|アンチトロンビンIII/アンチトロンビン [/P]
Basophilic Stippling|好塩基性斑点 [/B]
Bence-Jones Protein|ベンスジョーンズ蛋白 [Present/U]
Casts|円柱 [/U]
Cells [/Bone Marrow]
Clot Retraction|血餅退縮能 [/B]
Cryoglobulins|クリオグロブリン [/S]
Erythrocyte Survival|赤血球寿命 [/RBC]
Erythropoietin|エリスロポエチン [/S, /U]
Factor V|第V因子活性/不安定凝固因子/プロアクセレリン/Acグロブリン [/P]
Heterophil Antibody|異好抗体 [/S, /S]
Histamine|ヒスタミン [/P, /U]
Interleukin-2|インターロイキン-2 [/S]
Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [/S]
Myeloperoxidase|ミエロペルオキシダーゼ抗原/MPO抗原 [/Granulocyte]
Neopterin|ネオプテリン [/U]
Oxygen Saturation|酸素飽和度/O2飽和度 [/B]
Phospholipase A|ホスホリパーゼA [/S]
Plasminogen|プラスミノゲン活性 [/P]
Poikilocytes|赤血球大小不同 [/B]
Procollagen Type III Peptide|プロコラーゲンIIIペプチド [/S]
Protein S|プロテインS/プロテインS抗原量 [/P]
Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B]
Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S]
Thrombopoietin|トロンボポエチン [/P]
Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S]
Urobilinogen|ウロビリノゲン定性(尿) [/U]
Viscosity|血液粘稠度/血液流体特性検査/血液流体変動能検査 [/S]
Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [/S]
Vitamin B12 Binding Capacity|ビタミンB12結合能 [/S]
Vitamin B12 Binding Capacity, Unsaturated [/S]
Vitamin B12 Binding Protein [/S]
Volume [/P, /P, /RBC]
β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/S]
関連する検査の読み方 【A1】
赤血球量の増加。男性36mL/kg以上、女性32mL/kg以上。
【A2】
動脈血酸素飽和濃度正常(92%以上)。
【A3】
脾腫。
【B1】
白血球12,000/μL以上。
【B2】
血小板40万/μL以上。
【B3】
発熱や感染症が無く、好中球ALPスコアが増加する。
【B4】
ビタミンB12が9,000pg/mL以上に増加する。
【診断基準】
A1+A2+A3。A3がなければBの1~4のうちの2つがあること。
【CBC】
ヘモグロビンは18~24g/dL程度、ヘマトクリットは55%以上に増加する。血小板は40~100万/μL程度に増加する。白血球は多核白血球が増加し、時に類白血病班が認められる。赤血球はしばしば700~1200万/μL程度に増加する。MCV・MCH・MCHCは基準範囲内か低下する。特にヘモグロビンが男性で18.5g/dL、女性で16.5g/dLを超えた場合はPVを強く疑う。
【エリスロポエチン】
血清エリスロポエチン濃度は低値で、高値の場合は、二次性赤血球増多症を疑う。
【赤血球量】
クロム標識赤血球を用いた赤血球量の測定は、真性多血症と赤血球増多症との鑑別に役立つことがあり、PVと他の骨髄増殖性疾患との鑑別にも役立つ可能性がある。
【尿酸】
過剰産生により増加している。
【ビタミンB12】
ビタミンB12とB12結合能が上昇する。これは白血球より分泌されるトランスコバラミンⅢの血中濃度高値による。
【CD34陽性細胞】
基準範囲上限以上である。
【NAPスコア】
上昇する。末梢血液塗抹標本の好中球に存在するアルカリホスファターゼを化学的に染色して検出する検査で、アルカリホスファターゼが好中球の成熟とともに増加することから、細胞の成熟度を知るために行われる検査でNAP(neutrophil alkaline phosphatase) scoreと呼ばれている。臨床的には末梢血所見で類白血病反応を示すとき、CMLと真性赤血球増加症、骨髄線維症を鑑別するとき、汎血球減少が再生不良か発作性夜間ヘモグロビン尿症化を鑑別するときに有用である。
【循環赤血球量】
増加する。
【ESR】
血液粘調度が増加し、遅延する。
【網赤血球】
症例の44%で1.5%以上である。
【臨床所見】
「赤血球増加がみられる、二次性多血症がみられない、特徴的な骨髄変化がみられる」に加え、1)脾腫、2)エリスロポエチン4mIU/mL未満、3)血小板40万/μL以上、4)内因子コロニー陽性、5)好中球10,000/μL以上、6)骨髄におけるクローン性の細胞遺伝学的異常、のいずれかがある。
検体検査以外の検査計画 循環赤血球量測定

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