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パニック値

パニック値の定義
 パニック値の定義は「生命が危ぶまれるほど危険な状態にあることを示唆する異常値で、ただちに治療を開始すれば救命しうるが、その診断は臨床的な診察だけでは困難で、検査によってのみ可能である」と定義されている。
 パニック値の設定項目と設定値は施設ごとに異なり、その値は検査側と診療側が協議し、施設ごとに決めるべきものである。但し、ここでは、1.大凡の目安としてのパニック値を提示した。2.項目の中には、厳密な意味で、パニック値の定義に当てはまらないものもあるが、これ等の項目は、診療を進める際に、検査室、医師、患者の3者が検査情報の共有をすることが極めて大切な項目として取り上げた。
検査分野
血液検査
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
ヘモグロビン Hb   5.0 20.0 男性:14~18
女性:12~16
g/dL 自動血球計測器
ヘモグロビン Hb 7週以下 6.0 23.0 男児:9.0~13.5
女児:9.0~13.5
g/dL 自動血球計測器
【検査項目】ヘモグロビン
■解説■
ヘモグロビンは、日常診療での基本検査の一つで、貧血や赤血球増加症を疑う場合の診断と経過観察に有用である。
モグロビン値に異常を認めたら、赤血球数、ヘマトクリット値からMCV,MCH,MCHC値を算定する。
また、白血球数と血小板数も参考にするが、必ず末梢血液像で赤血球の形態を確認する。
貧血の場合は網赤血球数の算定を忘れない。
■関連疾患■
低値:各種の貧血
高値:真性赤血球増加症、二次性赤血球増加症、高度の脱水
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
ヘマトクリット Ht,Hct   20.0 60.0 男性:40~52
女性:34~45
自動血球計測器
ヘマトクリット Ht,Hct 新生児 33.0 71.0 男児:30.0~42.4
女児:30.0~41.6
自動血球計測器
【検査項目】ヘマトクリット
■解説■
ヘマトクリットは、日常診療での基本検査の一つであるが、異常を認めたらヘマトクリット値単独で評価せず、赤血球数、ヘモグロビン値、赤血球指数を参考にして診断を進める。
また、末梢血液像で赤血球の形態を観察することを忘れない。
■関連疾患■
低値:各種の貧血
高値:真性赤血球増加症、二次性赤血球増加症、高度の脱水
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
白血球数 WBC   1500 20000 3700~9400 /μL 自動血球計測器
白血球数 WBC 新生児 5000 25000 4400~19100 /μL 自動血球計測器
【検査項目】白血球数
■解説■
白血球数の減少は、主として白血球分画の40~60%を占める好中球の減少による。
原因は造血幹細胞の異常、造血に必要な材料の不足、破壊の亢進、化学療法や放射線治療などが挙げられる。
異常値を示したら赤血球数、血小板数を参考にし、末梢血液像から減少している白血球の種類と形態、芽球や異常細胞の有無、赤血球形態、血小板形態を観察する。
白血球数の増加は造血器の腫瘍性疾患、感染症や炎症に伴う反応性の増加とCSF産生腫瘍による造血因子の増加が原因である。
減少や増加の原因が不明の場合は、骨髄穿刺や生検を行い骨髄像を観察する。
■関連疾患■
低値:急性白血病、急性前骨髄性白血病、無顆粒球症、重症再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、抗腫瘍剤
高値:急性白血病、慢性骨髄性白血病、G-CSF産生腫瘍、骨髄増殖性疾患、重症感染症、悪性腫瘍の全身散布転移、類白血病反応
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
好中球数 Neutro   500   WBC数×(Stab+Seg)/100 /μL 全自動血液分析装置
【検査項目】好中球数
■解説■
白血球数の減少を見たら必ず絶対数を算定し、好中球が500/μL以下に減少していたら、血液疾患、重症感染症、肝・脾疾患、内分泌疾患、薬剤、放射線治療などを念頭に置き検査を進める。
骨髄穿刺や生検による骨髄像の観察は欠かせない。
■関連疾患■
低値:急性白血病、再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血、発作性夜間血色素尿症、骨髄異形成症候群、重症感染症、肝硬変、脾機能亢進症、内分泌疾患(アジソン病、バセドウ病)、薬剤(抗腫瘍剤、抗炎症剤、抗菌剤、抗甲状腺薬、抗精神薬、経口糖尿病薬)、放射線治療
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
血小板数 Plt   5 60 14~38 ×10⁴/μL 自動血球計測器
血小板数 Plt 新生児 20 100 22~76 ×10⁴/μL 自動血球計測器
【検査項目】血小板数
■解説■
血小板数の減少は産生低下と消費・破壊亢進が原因であるが、骨髄像により巨核球の数と形態の観察で鑑別が可能である。
巨核球数が少なければ産生低下であり、多ければ末梢での消費・破壊の亢進を疑う。
また、薬剤や放射線治療も念頭に入れ検査を進める。
血小板減少に見合う紫斑などの出血症状が見られないときは、EDTAによる偽血小板減少症を除外する必要がある。
EDTAによる偽血小板減少症は悪性腫瘍、膠原病、感染症、動脈硬化などの疾患や健常者でも見られる。血小板の増加は腫瘍性と反応性があるが、反応性は臨床的に問題になることは少ない。
腫瘍性は末梢血液像、骨髄像で確認するが、同時に血小板機能の異常の有無を検査する。
■関連疾患■
低値:急性白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、再生不良性貧血、巨赤芽球性貧血、特発性血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、溶血性尿毒症症候群、血栓性微小血管障害、DIC、悪性腫瘍骨髄転移、抗腫瘍剤、放射線治療、EDTAによる偽血小板減少症
高値:慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、骨髄線維症
検査分野
末梢血液像
検査項目 パニック値:以上 基準値 測定法
骨髄芽球の出現 出現 出現せず 鏡検法
【検査項目】骨髄芽球の出現
■解説■
骨髄芽球は、形態学的に最も幼若な白血球で、健常者では骨髄-血液関門を通過出来ないので、末梢血中には見られない。
末梢血中の芽球は白血病細胞である可能性が高く、芽球の比率が末梢血で20% 以上 あれば急性白血病と診断する。
また、末梢血の芽球 や赤芽球の出現を白赤芽球症と呼び、骨髄線維症を疑う重要な所見となる。
■関連疾患■
急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、類白血病反応、化学療法の回復期
検査項目 パニック値:以上 基準値 測定法
赤芽球の出現 出現 出現せず 鏡検法
【検査項目】赤芽球の出現
■解説■
全ての血球は骨髄で産生されるが、骨髄には静脈洞の内皮細胞の間隙、いわゆる骨髄-血液関門があり、変形能の少ない有核赤血球はこれを通過できない。
しかし、造血の極端な亢進や、腫瘍細胞が骨髄へ浸潤しバリアが破壊されると赤芽球は末梢血中に出現する。
健常者では、赤芽球は骨髄中で最も若い赤血球細胞として生成され、前赤芽球、好塩基性赤芽球、多染性赤芽球、正染性赤芽球の順に成熟し、脱核して網赤血球として末梢血に出現し、24 時間で成熟赤血球になる。
■関連疾患■
骨髄線維症、DIC、悪性腫瘍の骨髄転移、白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、リンパ腫、高度な溶血、敗血症、重症感染症
検査項目 パニック値:以上 基準値 測定法
マラリア原虫の存在 存在 存在せず 鏡検法
【検査項目】マラリア原虫の存在
■解説■
マラリアは、ライト・ギムザ染色した末梢血液の薄層または厚層塗抹標本の顕微鏡検査で、原虫を同定することで可能になる。
ただし、最初の血液塗抹標本が陰性の場合は、4~6時間毎に塗抹標本作製を繰り返すべきである。
検出感度は厚層塗抹標本の方が高いが、染色前に赤血球が溶解するため、解釈は薄層塗抹標本よりは困難である。
マラリア原虫が寄生した赤血球像は、三日熱、卵型マラリアはSchueffner斑点、熱帯熱マラリアはMaurer斑点が見られる。
初診時に中等度以上の貧血を示す症例は重症例である。
血小板数が減少していればDICを考える。
■関連疾患■
マラリア
検査項目 パニック値:以上 基準値 測定法
ミクロフィラリアの存在 存在 存在せず 鏡検法
【検査項目】ミクロフィラリアの存在
■解説■
フィラリア症の診断は、鏡検で血中のミクロフィラリアを検出することで確定する。
血液の濾過または遠心分離による濃縮法は、血液厚層塗抹標本より感度が高い。
血液検体はミクロフィラリア血症のピーク時(殆どの流行地域では夜間、しかし太平洋諸島では昼間)に採取しなければならない。
超音波検査により、拡張したリンパ管の中に生きた成虫を観察することが出来る。
その成虫の動きをフィラリアダンス(filarial dance)と呼ぶ。
■関連疾患■
フィラリア
検査分野
凝固検査
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
フィブリノゲン Fbg   50   150~400 mg/dL トロンビン時間法
【検査項目】フィブリノゲン
■解説■
フィブリノゲンは肝で合成され、約80%は血管内、20%は組織に分布し半減期は2~4日で、血小板凝集による一次止血とフィブリン網形成による二次止血の両者に利用される凝固系の重要な基質である。
フィブリノゲンは産生低下、止血機序における消費、プラスミンによる分解などで減少し、重篤な出血傾向を来す。
また、急性反応性物質として炎症や悪性腫瘍では増加する。
出血傾向は50mg/dL以下に減少すると見られる。
また、特にパニック値とされていないが、800mg/dL以上では血栓形成に注意する必要がある。
■関連疾患■
DIC、巨大血栓症、大量出血、急性肝不全、非代償性肝硬変、重症肝障害、無フィブリノゲン血症、
低フィブリノゲン血症、異常フィブリノゲン血症、L-アスパラギナーゼ投与
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
プロトロンビン時間 PT     30 10~12 Quick一段法
【検査項目】プロトロンビン時間(秒)
■解説■
外因系と共通系凝固因子(Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅹ因子)の先天的欠乏症、分子異常症とⅡ、Ⅶ、Ⅹ因子が肝で合成されるため、重症肝障害の際に減少しPT時間が延長する。
この検査はスクリーニング検査であり、必ずAPTTと合わせて検査する必要がある。
INRはWHOの標準PT試薬を基準として、それぞれのPT試薬をISI(international normalized ratio)で標準化した国際的に互換性のある表記法である。
Ⅱ、Ⅶ、Ⅹ因子は肝で合成されるビタミンK依存性の凝固因子で、肝機能を強く反映するため劇症肝炎の診断基準(40%以下)に採用されている。
■関連疾患■
非代償性肝硬変、劇症肝炎、DIC、第Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅹ因子欠乏症、線溶亢進、
循環抗凝血素、ビタミンK欠乏症、ワーファリン投与
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
プロトロンビン時間 PT     3.0 1±0.1 INR Quick一段法
【検査項目】プロトロンビン時間(INR)
■解説■
外因系と共通系凝固因子(Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅹ因子)の先天的欠乏症、分子異常症とⅡ、Ⅶ、Ⅹ因子が肝で合成されるため、重症肝障害の際に減少しPT時間が延長する。
この検査はスクリーニング検査であり、必ずAPTTと合わせて検査する必要がある。
INRはWHOの標準PT試薬を基準として、それぞれのPT試薬をISI(international normalized ratio)で標準化した国際的に互換性のある表記法である。
Ⅱ、Ⅶ、Ⅹ因子は肝で合成されるビタミンK依存性の凝固因子で、肝機能を強く反映するため劇症肝炎の診断基準(40%以下)に採用されている。
■関連疾患■
非代償性肝硬変、劇症肝炎、DIC、第Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅶ、Ⅹ因子欠乏症、線溶亢進、
循環抗凝血素、ビタミンK欠乏症、ワーファリン投与
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
活性化部分
トロンボプラスチン時間
APTT     100.0 27.1~40.9 Langdell法
【検査項目】活性化部分トロンボプラスチン時間
■解説■
APTTは内因系と共通系の凝固因子活性を総合的に測定するものである。
APTTの値に影響を与える因子は内因系(XII、XI、Ⅸ、Ⅷ、プレカリクレイン、高分子キニノゲン)、共通系(Ⅹ、Ⅴ、Ⅱ、Ⅰ)およびvon Willebrand因子で、これらの因子の活性低下、またはこれら因子に対するインヒビターの存在でAPTT値は延長する。
この検査は通常二次止血のスクリーニング検査としてPTと同時に測定し、併せて結果を判定する。
APTT延長、PT正常なら内因系凝固因子の異常を、APTT延長、PT延長なら共通系凝固因子の異常を疑う。
パニック値の多くは重症肝障害やDICなどの複合性凝固障害で見られる。
■関連疾患■
非代償性肝硬変、劇症肝炎、高度肝障害、DIC、抗リン脂質抗体症候群、血友病A、血友病B、後天性血友病、
von Willebrand因子減少、循環抗凝血素、第Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅹ、XI、XII因子欠乏症、高分子キニノゲン欠乏症、
プレカリクレイン欠乏症、ビタミンK欠乏症、抗凝固療法
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アンチトロンビンIII ATIII   30   80~130 %(活性値) 発色性合成基質法
【検査項目】アンチトロンビンIII [%(活性値)]
■解説■
アンチトロンビンは肝と血管内皮細胞で合成される糖タンパクで血液凝固に抑制的に働く因子である。
生理作用としては、トロンビンや活性第Ⅹ因子(Ⅹa)と結合し、複合体を作りこれらの因子活性を失活させる。
また、Ⅸa、Xia、XIIa、カリクレイン、プラスミンなどの活性も阻害する。
DICではトロンビンと複合体(TAT)を形成するために減少する。
先天性アンチトロンビン欠損症は500~1000人に1人程度見られ、血栓症を発症しやすいので深部静脈血栓症の危険因子とされている。
先天性アンチトロンビン欠損症には抗原量と活性値が同程度に減少するⅠ型欠乏症と、活性値は低下するが抗原量は基準範囲内のⅡ型欠乏症に分けられる。
■関連疾患■
非代償性肝硬変、劇症肝炎、重症肝障害、DIC、血栓症、敗血症、多臓器不全、
先天性アンチトロンビン欠損症、ヘパリン長期投与
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アンチトロンビンIII ATIII   5   15~31 mg/dL(抗原量) EIA
【検査項目】アンチトロンビンIII [mg/dL(抗原量)]
■解説■
アンチトロンビンは肝と血管内皮細胞で合成される糖タンパクで血液凝固に抑制的に働く因子である。
生理作用としては、トロンビンや活性第Ⅹ因子(Ⅹa)と結合し、複合体を作りこれらの因子活性を失活させる。
また、Ⅸa、Xia、XIIa、カリクレイン、プラスミンなどの活性も阻害する。
DICではトロンビンと複合体(TAT)を形成するために減少する。
先天性アンチトロンビン欠損症は500~1000人に1人程度見られ、血栓症を発症しやすいので深部静脈血栓症の危険因子とされている。
先天性アンチトロンビン欠損症には抗原量と活性値が同程度に減少するⅠ型欠乏症と、活性値は低下するが抗原量は基準範囲内のⅡ型欠乏症に分けられる。
■関連疾患■
非代償性肝硬変、劇症肝炎、重症肝障害、DIC、血栓症、敗血症、多臓器不全、
先天性アンチトロンビン欠損症、ヘパリン長期投与
検査分野
生化学検査
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
総蛋白 TP   3.5 10.0 6.8~8.3 g/dL Biuret法
【検査項目】総蛋白
■解説■
血清中には約100種類の蛋白が含まれ、膠質浸透圧の維持、免疫による防御、物質の運搬などに関与している。
総蛋白はこれらの蛋白の総称であるが、臨床的にはセルロースアセテート膜電気泳動法で分画されるアルブミン、α1-グロブリン、α2 -グロブリン、β-グロブリン、γ-グロブリンの5種に分けられる。
総蛋白の増減は、これら5分画の大部分を占めるアルブミンとγ-グロブリンの変動を反映している。
低値の場合は主としてアルブミンの減少が原因であり、高値の場合はγグロブリンの増加が原因で、多発性骨髄腫や原発性マクログロブリン血症で見られる。
■関連疾患■
低値:ネフローゼ症候群、重症肝障害、肝硬変、悪液質、蛋白漏出性胃腸症、吸収不全症候群、無γグロブリン血症、先天性無アルブミン血症
高値:多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、本態性M蛋白血症、自己免疫性肝炎、脱水症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アルブミン ALB,Alb   2.5   3.8~5.3 g/dL BCG
【検査項目】アルブミン
■解説■
アルブミンは肝で産生される蛋白質で、血中での半減期は約15日である。
アルブミンの減少は産生の低下、体外への漏出、代謝亢進、栄養不良で起こる。
パニック値を見た場合は、悪液質などのかなり重篤な状態にあると考える。
■関連疾患■
ネフローゼ症候群、重症肝障害、肝硬変、悪液質、蛋白漏出性胃腸症、吸収不全症候群、先天性無アルブミン血症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アンモニア NH3     400 30~80 μg/dL 奥田・藤田変法
【検査項目】アンモニア
■解説■
アンモニアはアミノ酸の代謝産物の一つで、血中のアンモニアは外因性と内因性に分けられる。
外因性アンモニアは、食物中の蛋白由来の窒素化合物が腸内細菌により脱アミノ化されて生じる。
内因性アンモニアは、アミノ酸が脱アミノ化されて生じる。
血中のアンモニアは肝の尿素回路で尿素に変わり、腎から排泄される。
このため、血中のアンモニアの増加は、肝でのアンモニアの代謝障害と門脈-大循環短絡の結果であり、パニック値の多くは重症肝障害が原因と考えてよい。
■関連疾患■
肝性昏睡、肝不全、重症肝炎、非代償性肝硬変、尿毒症、Budd-Chiari症候群、Reye症候群、先天性高アンモニア血症Ⅰ型ならびにⅡ型
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アルカリ
フォスファターゼ
ALP     1500 115~359 U/L JSCC標準化対応法
【検査項目】アルカリフォスファターゼ
■解説■
アルカリフォスファターゼは物質やエネルギーの運搬、無機リンの供給、骨の石灰化などに関与する酵素で、産生される臓器別にアイソザイムが存在する。
血中の増加は産生細胞での産生増加と産生細胞量の増加が考えられる。
基準値の3倍を超える高度の増加は、多くの場合、前立腺癌や乳癌などの骨転移、肝外・肝内胆管閉塞で見られる。
■関連疾患■
転移性骨腫瘍、閉塞性黄疸、肝占拠性病変、肝内・肝外胆管閉塞、小児一過性高アルカリフォスファターゼ血症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アミラーゼ AMY     400 60~190 U/L 酵素法
(基質Et-G7-PNP)
【検査項目】アミラーゼ
■解説■
アミラーゼは卵管、肝、腎、肺などでも産生されるが、血中アミラーゼの大部分は膵と唾液腺由来である。
パニック値を見た場合は、急性膵炎を第一に考えるが、半減期が2~4時間と短いため、発症から検体採取までの時間を考慮に入れ数値を判断する。
■関連疾患■
急性膵炎、慢性膵炎の増悪期、膵管閉塞
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
リパーゼ       700 11~53 U/L 酵素法
【検査項目】リパーゼ
■解説■
リパーゼは膵腺房細胞で産生され、膵液中に分泌されるので、血中のリパーゼ活性は膵の損傷による血中逸脱と考えてよい。
半減期は7~14時間とアミラーゼに比べ長いので、発症後数時間が経過した症例でアミラーゼ値が低下した場合でも高値を保つ。
パニック値はアミラーゼと同じ急性膵炎や慢性膵炎の急性増悪で見られる。
■関連疾患■
急性膵炎、慢性膵炎の増悪期、膵管閉塞
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アスパラギン酸
アミノトランスフェラーゼ
AST(GOT)     1000 13~33 U/L JSCC標準化対応法
【検査項目】アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)
■解説■
ASTは、主として肝細胞、心筋、骨格筋、腎、赤血球に存在し、ALTは肝と腎に多く分布し、これらの細胞の破壊や壊死により血中に逸脱する。
但し、腎の場合はASTは血中に逸脱するより尿中に排泄される量が多いため、腎障害での血中上昇は稀である。
AST、ALTのパニック値は高度な肝細胞壊を伴う劇症肝炎やショック肝で見られ、時に2000U/Lを超えることがある。
これ等の病態ではAST>ALとなるが、これはASTの肝含有量がALTより多いことによる。
また、AST高値は急速に低下するが、これは半減期が5~10時間と短いAST-mの活性値減少による。
ASTは通常ALTと同時に測定し、AST/ALTの比を用いて病態を判定するが、急性肝炎では初期はAST>ALTであり、極期を過ぎるとAST<ALTになる。
これはASTの半減期が10~20時間、ALTのそれが40~50時間であり、極期を過ぎ血中への逸脱が止まると半減期の長いALTの血中残存量が多くなるためである。
■関連疾患■
ウイルス性急性感染、ウイルス性慢性肝炎の急性増悪期、劇症肝炎、虚血性肝炎、ショック肝、薬物性肝障害
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アラニンアミノ
トランスフェラーゼ
ALT(GPT)     1000 男性:8~42
女性:6~27
U/L JSCC標準化対応法
【検査項目】アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)
■解説■
ASTは、主として肝細胞、心筋、骨格筋、腎、赤血球に存在し、ALTは肝と腎に多く分布し、これらの細胞の破壊や壊死により血中に逸脱する。
但し、腎の場合はASTは血中に逸脱するより尿中に排泄される量が多いため、腎障害での血中上昇は稀である。
AST、ALTのパニック値は高度な肝細胞壊を伴う劇症肝炎やショック肝で見られ、時に2000U/Lを超えることがある。
これ等の病態ではAST>ALとなるが、これはASTの肝含有量がALTより多いことによる。
また、AST高値は急速に低下するが、これは半減期が5~10時間と短いAST-mの活性値減少による。
ASTは通常ALTと同時に測定し、AST/ALTの比を用いて病態を判定するが、急性肝炎では初期はAST>ALTであり、極期を過ぎるとAST<ALTになる。
これはASTの半減期が10~20時間、ALTのそれが40~50時間であり、極期を過ぎ血中への逸脱が止まると半減期の長いALTの血中残存量が多くなるためである。
■関連疾患■
ウイルス性急性感染、ウイルス性慢性肝炎の急性増悪期、劇症肝炎、ショック肝、虚血性肝炎、薬物性肝障害
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
クレアチンキナーゼ CK     1000 男性:30~190
女性:20~150
IU/L UV
【検査項目】クレアチンキナーゼ(CK)
■解説■
CKは骨格筋に最も大量に含まれ含有量は1g当たり2500Uである。
次いで、心筋に500U/g、脳に200U/g含まれる。.CKはMM、MB、BBの3種のアイソザイムが知られており、MMは骨格筋と心筋に、また、BBは脳、子宮、腸管に含まれ臓器特異性は低い。
これに対し、MBは心筋に含まれる割合が高く臓器特異性がた高い。
CKがパニック値を示す場合は、早期に診断と治療を必要とする最も差し迫った疾患として心筋梗塞を考える必要がある。
この場合は、CKアイソザイム(CK-MB)を測定するとともに、心筋トロポニンI、ヒト心臓型脂肪酸結合蛋白、AST、LDなどを測定する。
また、横紋筋融解症を疑う場合は、血中と尿中のミオグロビンを測定する。
■関連疾患■
急性心筋梗塞、心筋炎、進行性筋ジストロフィー、横紋筋融解症、悪性高熱症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
CK-MB CK-MB     10 5 ng/mL以下 CLIA
【検査項目】CK-MB
■解説■
CKはMM、MB、BBの3種のアイソザイムがあるが、セルロースアセテート膜電気泳動法で分画すると、MMは88~96%、MBは1~4%、BBは1%未満である。
MBは心筋に大量に含まれ臓器特異性が極めて高いため、心筋梗塞の初期診断に有用である。
心筋梗塞の場合、CK-MBは発症後4~6時間で上昇し、18~24時間でピークに達する。発症後4時間以内の陽性率は20%前後とされているため、心筋梗塞を疑う場合は心筋トロポニンIやヒト心臓型脂肪酸結合蛋白の測定を急ぐ。
また、CK-MBは横紋筋融解症や心筋炎などの診断を急ぐ必要のある疾患でもパニック値を示す場合があるので注意する。
■関連疾患■
急性心筋梗塞、心筋炎、進行性筋ジストロフィー、横紋筋融解症、多発性筋炎、進行性筋ジストロフィー症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
乳酸デヒドロゲナーゼ LD,LDH     1000 200~400 IU/L JSCC標準化対応法
【検査項目】乳酸デヒドロゲナーゼ(LD)
■解説■
LDは体内の全ての細胞に存在し、5種のアイソザイムが存在し、活性の上昇は細胞の損傷による。
LDは細胞の可溶性分画に存在するので、細胞の障害時には直接またはリンパ管経由で血管内に流入するため、高感度で細胞障害を検知できる。
高値の場合はアイソザイムを測定し臓器を特定する必要があるが、肝臓、心臓や骨格筋などの大きな臓器の障害を来す急性肝炎、
急性心筋梗塞、横紋筋融解症などでパニック値が見られる。
また、赤血球は多量のLDを含有しているので、溶血検体では高値となる。
■関連疾患■
急性心筋梗塞、急性肝炎、溶血性貧血、悪性貧血、急性骨髄性白血病、悪性リンパ腫、悪性腫瘍、横紋筋融解症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
コリンエステラーゼ ChE   40   200~495 IU/L JSCC標準化対応法
【検査項目】コリンエステラーゼ
■解説■
高度なコリンエステラーゼ活性低下の原因は3種に分けられる。
この酵素は肝細胞で産生される酵素であるため重症肝障害では合成低下により活性値低下を来す。
有機リン中毒ではコリンエステラーゼの酵素活性自体が阻害されるため、著しい活性低下を見る。
また、遺伝性コリンエステラーゼ欠損症や低下症の患者はコリンエステルの分解が遅いため、筋弛緩剤の使用時に遷延性無呼吸を起こすので注意が必要である。
■関連疾患■
非代償性肝硬変、重症肝障害、有機リン中毒、遺伝性コリンエステラーゼ欠損症、低下症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
心筋トロポニンⅠ cTnI     0.3 0.009 ng/mL以下 IEMA
【検査項目】心筋トロポニンI
■解説■
トロポニンは心筋の筋原線維を構成するフィラメントで、トロポニンT(TnT)、トロポニンI(TnI)、トロポニンC(TnC)からなり、心筋の収縮調節を行っている。
TnIは心筋特異性が高く、急性心筋梗塞では、発症³時間以内に40~45%、12時間以降では全症例でピーク値となり、数日~1週間にわたって異常値を示す。
■関連疾患■
急性心筋梗塞、心筋炎、不安定狭心症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
総ビリルビン T-Bil,TB 新生児   15.0 0.4~3.2 mg/dL 酵素法
【検査項目】総ビリルビン(新生児)
■解説■
新生児全例の半数強に,生後1週間以内に黄疸が認められるが、以下の所見を見た場合は、特に注意が必要である。
  1. 生後24時間以内の黄疸
  2. 総ビリルビン > 15mg/dL
  3. 0.2mg/dL/時以上または5mg/dL/日以上の総ビリルビン上昇
  4. 新生児胆汁鬱滞を示唆する総ビリルビンが5mg/dL以下で抱合型ビリルビン濃度が1mg/dL以上、または抱合型ビリルビンが総ビリルビンの20%以上の場合
■関連疾患■
新生児黄疸、先天性胆道閉鎖症、Crigler-Najjar症候群Ⅰ型
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
クレアチニン Cr     3.00 男性:0.65~1.09
女性:0.46~0.82
mg/dL 酵素法
【検査項目】クレアチニン
■解説■
クレアチニンは筋肉中のクレアチンの最終代謝産物で、腎糸球体で濾過され、尿細管での再吸収・分泌が殆どないため、糸球体濾過量(GFR)の指標となる。
クレアチニンの上昇は腎前性因子(脱水、ショック、心不全)、腎精因子(糸球体腎炎、じん不全)、腎後性因子(尿管閉塞)などでみられるが、パニック値を見た場合は腎不全と考えてよい。
■関連疾患■
腎不全
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
尿酸 UA     男性:12.0
女性:10.0
男性:3.0~7.7
女性:2.0~5.5
mg/dL 酵素法
尿酸 UA 新生児   13.0 2.0~5.6 mg/dL 酵素法
【検査項目】尿酸
■解説■
尿酸はプリン体の最終代謝産物で、食物由来(肉類、豆類、キノコ類)、細胞由来(白血病、腫瘍)と体内での合成でプリン体が増えると尿酸値も高値となる。
パニック値の殆どは痛風によるが、疼痛などの臨床症状を伴わない場合があるので注意する。
■関連疾患■
痛風、無症候性高尿酸血症
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
尿素窒素 UN,BUN     80 8~20 mg/dL 酵素法
【検査項目】尿素窒素
■解説■
尿素窒素は蛋白代謝の終末代謝産物で、蛋白質の分解で生じたアンモニアから生成される。
血中の尿素窒素は腎糸球体で濾過されるが、35~70%は尿細管で再吸収され、残りが尿中に排泄される。
尿細管での再吸収量は尿量に強く影響されるため、血中尿素窒素の量は腎からの排泄量のみならず、腎外性因子の影響も受ける。
尿素窒素は糸球体濾過率(GFR)が30%前後に低下して初めて上昇するので、腎機能の鋭敏なマーカーとは言えず、臨床的には必ずクレアチニンと同時測定する。
■関連疾患■
腎不全、尿毒症、重症心不全、高度血管内脱水
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
グルコース Glu,BS   50 500 70~109(空腹時) mg/dL 酵素法
グルコース Glu,BS 4週以下 40     mg/dL 酵素法
【検査項目】グルコース(空腹時)
■解説■
低血糖はインスリンの過剰状態や糖利用の亢進などで見られる。
グルコースは中枢神経系では殆ど唯一のエネルギー元なので、低血糖状態は生命の危険に直結していると考えてよい。
高血糖はインスリンの分泌低下や感受性低下による末梢組織でのグルコースの利用低下に起因する。
高値の場合は、尿中ケトン体、血漿浸透圧、血液ガスなどを測定し、糖尿病性昏睡の危険性についての判断を急ぐ。
■関連疾患■
低値:インスリン・経口糖尿病薬の過剰使用、ダンピング症候群、下垂体機能、副腎機能低下症、甲状腺機能亢進症、膵β細胞腫、インスリノーマ、インスリン自己免疫症候群
高値:糖尿病性ケトアシドーシス、非ケトン性高浸透圧性昏睡
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
トリグリセリド TG     1000 50~150 mg/dL 酵素法
【検査項目】トリグリセリド
■解説■
中性脂肪は食物として摂取される脂肪の殆どを占め、一日50~100gが腸管から吸収されエネルギー源として利用されている。
動脈硬化の危険因子として測定されるが、測定値は食事と密接に関係するので、採血は12時間の絶食後に行う。
1000mg/dL以上の高値はスクリーニング検査や健診でしばしば見つかるが、この場合、膵臓から多量の膵液が分泌され、含まれている消化酵素が膵臓そのものを消化して重篤な急性膵炎を発症する危険があるのでパニック値として扱う。
■関連疾患■
リポ蛋白リパーゼ欠損症、肝性トリグリセリド欠損症、高カイロミクロン血症、broad-β病、アポ蛋白C-Ⅱ欠損症、アポ蛋白E欠損症、LCAT欠損症、ネフローゼ症候群、急性膵炎、Zieve症候群、アルコール多飲
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
ナトリウム Na   120 160 135~147 mEq/L 電極法
【検査項目】ナトリウム
■解説■
Naは細胞外液中の総陽イオンの90%を占め、NaCl(食塩)として体内に摂取され、腎を中心とする浸透圧調節系と容量調節系で体内の量と濃度が調節されている。
このため、血清Na値の異常は、多くの場合、血清浸透圧の異常を示す病態と一致する。
低Na血症は、細胞浮腫を生じ脳ヘルニアが発症すれば生命が危険になる。
Na低値の患者が嘔気、頭痛、傾眠、見当識障害を訴えたら、危険な状態にあると考えてよい。
高Na血症は細胞萎縮が起こり、全身倦怠感、無気力、興奮状態、痙攣、昏睡に至る。
■関連疾患■
低値:心不全、肝硬変、ネフローゼ症候群、腎不全、ADH分泌異常症候群(SIADH)、甲状腺機能低下症、副腎機能不全、Na喪失性腎症、低アルドステロン症、激しい嘔吐、利尿薬
高値:激しい下痢、腎性尿崩症、中枢性尿崩症、コントロール不良の糖尿病、マンニトールの静注、利尿薬
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
カリウム K   2.5 6.0 3.6~5.0 mEq/L 電極法
カリウム K 新生児 2.6 7.0 4.2~5.9 mEq/L 電極法
カリウム K 乳幼児 2.6 5.8 3.6~4.7 mEq/L 電極法
【検査項目】カリウム
■解説■
Kは細胞内液中に存在する、陽イオンの大部分を占め、体内総K量の98%は細胞内にある。
細胞内K濃度は140mEq/Lであるが、細胞外液中のK量は4mEq/Lであり細胞の内外に大きな濃度勾配がある。
細胞の電気的活動はこの濃度勾配が規定しているため、血清Kの異常は心筋、骨格筋、平滑筋、神経の異常を来すことになる。
低K血症は細胞外液から細胞内へのKの移行、腎又は腎以外からのKの喪失により、麻痺や呼吸筋力低下により死に至ることもある。
高K血症は腎機能障害、薬剤による腎からのK排泄低下、細胞内から細胞外へのKの移動が原因で、臨床的には致死性の不整脈(心室細動)を発症する。
■関連疾患■
低値:原発性アルドステロン症、Bartter症候群、Liddle症候群、Cushing症候群、代謝性アルカローシス、近位尿細管性アシドーシス(2型)、遠位尿細管性アシドーシス(1型)、糖尿病性ケトアシドーシス、低Mg血漿、頻回の嘔吐・下痢、薬剤(サイアザイド系利尿薬、グリチルリチン、アムホテリシンB、ステロイド長期投与)
高値:急性腎不全、慢性腎不全、副腎機能不全、原発性あるいは二次性低アルドステロン症、偽性低アルドステロン症、Gordon症候群、遠位尿細管性アシドーシス(4型)、家族性高K血症、横紋筋融解症、K保持性利尿薬、シクロスポリン
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
クロール Cl   80 120 98~108 mEq/L 電極法
【検査項目】クロール
■解説■
Clは細胞外液の陰イオンの70%を占め、Na:Cl=140:100の関係があり、その濃度はNa濃度と並行して変動し、細胞外液の電気的中性を維持している。
血清Cl濃度は血清Na濃度と並行して変動するが、その関係が見られない場合は酸・塩基平衡の異常が示唆される。
陰イオンギャップ(anion gap)の計算式はAG=Na-Cl-HCO3であるから、Na-Cl=AG+HCO3が導かれAGの基準値12とHCO3の基準値24を入れると、Na-Clは36となる。
つまり、NaとClは、大凡36の差を維持しながら並行して変動する。
この36の差が大きく変動するのは、AGかHCO3が変動するためであり、Na-Clが36よりも高値となるのはHCO3が高値となる代謝性アルカローシスか呼吸性アシドーシスを、また、36よりも低値となるのはHCO3が低値となる呼吸性アルカローシスか尿細管性アシドーシスを考える。
■関連疾患■
低値:代謝性アルカローシス、呼吸性アシドーシス、ADH分泌異常症候群(SIADH)、副腎機能不全、頻回の嘔吐
高値:呼吸性アルカローシス、尿細管性アシドーシス、ネフローゼ症候群、高張性脱水
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
マグネシウム Mg   1.0 5.0 1.7~2.6 mg/dL キシリジルブルー法
【検査項目】マグネシウム
■解説■
Mgの多くは細胞内に存在し、60~65%が骨に、23%前後が筋肉に、残りがその他の組織に分布している。
生理作用は補酵素として酵素作用の調節に関与するとともに、細胞膜の安定化、電解質の輸送調節、神経筋の情報伝達、骨のミネラル化などの働きをしている。
Mgが欠乏すると、まず、尿中Mgが低値になり、次いで血球中のMgが減少し、最後に血中Mgの減少を見る。
このため、Mgの不足を疑う場合は尿中、血球中のMgを血清Mgと同時に測定する。
高値の場合は血清Mgの測定だけで良い。
■関連疾患■
低値:吸収不良症候群、小腸切除後、重症下痢、腎不全多尿期、薬剤(シクロスポリン、アムホテリシンB、シスプラチン、ゲンタマイシン、カルベペニシリン)
高値:急性腎不全、慢性腎不全
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
カルシウム Ca   6.0 12.0 8.2~10.0 mg/dL o-CPC
【検査項目】カルシウム
■解説■
Caは生体内で最も大量に存在する無機質で、99.3%以上はリン酸と共にハイドロキシアパタイトを形成し、骨や歯の骨格を形成している。
0.6%は細胞内に存在し、血清中のCaは0.1%で、その48%が遊離したイオン化Caとして、残りはアルブミンと結合している。
イオン化Caは活性を持ち、厳密に濃度が調整されており、血液凝固、酵素の活性化、筋収縮、神経刺激電動などの重要な生理機能作用を担っている。
血清Caの濃度はPTHと活性型ビタミンDにより維持されており、このいずれかが欠けても低値になる。
Ca低値はテタニーを発症する。
Ca高値は致死性の不整脈、筋麻痺、意識障害を来し、死に至る危険がある。
■関連疾患■
低値:低アルブミン血症(イオン化Caは正常)、腎不全、副甲状腺機能低下症、低Mg血症、急性膵炎、横紋筋融解症、腫瘍融解症候群、ビタミンD欠乏症、偽性副甲状腺機能低下症、頻回のクエン酸含有輸血、薬剤(シスプラチン、ペンタミジン、ケトコナゾール、ホスカルネット)
高値:原発性副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍(乳癌、骨髄腫、リンパ腫の広範な骨侵襲)、サルコイドーシス、悪性体液性高Ca血症(肺、頭頚部、食道の扁平上皮癌、腎癌、膀胱癌、卵巣癌)、ビタミンD中毒
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
イオン化カルシウム Ca++   3.0 6.5 2.24~2.58 mEq/L イオン電極法
【検査項目】イオン化カルシウム
■解説■
Caは生体内で最も大量に存在する無機質で、99.3%以上はリン酸と共にハイドロキシアパタイトを形成し、骨や歯の骨格を形成している。
0.6%は細胞内に存在し、血清中のCaは0.1%で、その48%が遊離したイオン化Caとして、残りはアルブミンと結合している。
イオン化Caは活性を持ち、厳密に濃度が調整されており、血液凝固、酵素の活性化、筋収縮、神経刺激電動などの重要な生理機能作用を担っている。
血清Caの濃度はPTHと活性型ビタミンDにより維持されており、このいずれかが欠けても低値になる。
Ca低値はテタニーを発症する。
Ca高値は致死性の不整脈、筋麻痺、意識障害を来し、死に至る危険がある。
■関連疾患■
低値:腎不全、副甲状腺機能低下症、低Mg血症、急性膵炎、横紋筋融解症、腫瘍融解症候群、ビタミンD欠乏症、偽性副甲状腺機能低下症、頻回のクエン酸含有輸血、薬剤(シスプラチン、ペンタミジン、ケトコナゾール、ホスカルネット)
高値:原発性副甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍(乳癌、骨髄腫、リンパ腫の広範な骨侵襲)、サルコイドーシス、悪性体液性高Ca血症(肺、頭頚部、食道の扁平上皮癌、腎癌、膀胱癌、卵巣癌)、ビタミンD中毒、
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
無機リン IP,P   1.5 9.0 2.5~4.5 mg/dL 比色法
【検査項目】無機リン
■解説■
リン(P)は体重の約1%(500~800g)を占め、Caに次いで多い無機物で、その80~90%は骨に、15%は細胞内液に存在し、細胞外液には0.1%しか存在しない。
細胞外液中のPは、無機リン酸、すなわちHPO₄²とH₂PO₄の陰イオンとして存在し、血清中のPの濃度はHPO₄²-とH₂PO⁴の両者に含まれるPの総量である。
細胞外液中のiP濃度はPTH、活性型ビタミンD、FGF-23による腸管吸収、骨融解、腎排泄により調節されているため、低値は腸管からの吸収障害、腎からの排泄増加、細胞外から細胞内への移行により生じる。
高値は腎からに排泄減少、大量のリン酸摂取、細胞内から細胞外への移動により生じる。
■関連疾患■
低値:アルコール中毒の離脱期、呼吸性アルカローシス、吸収障害、糖尿病ケトアシドーシスの回復期、悪性腫瘍の急性増殖期、経口リン吸着薬(水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム)、高カロリー輸液、重度の熱傷
高値:腎不全、副甲状腺機能低下症、偽副甲状腺機能低下症、急性組織破壊、横紋筋融解症、悪性腫瘍骨転移、先端巨大症、腫瘍融解症候群、高リン血症性腫瘍性カルチノーシス、代謝性アシドーシス、呼吸性アシドーシス、リンの過剰投与、ビタミンD中毒
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
血清鉄 Fe     350 男性:44~192
女性:29~164
μg/dL BPT法
【検査項目】血清鉄
■解説■
健常成人の鉄の総量は約4gで、2/3はヘモグロビンとして赤血球中に、また、1/3がフェリチン、ヘモジデリンと結合し貯蔵鉄として細胞内にプールされ、3~5%がミオグロビンに含まれている。血清中の鉄は総鉄量の0.1%で、トランスフェリンと結合している。鉄は酸素の運搬、DNA合成、様々な代謝に関与しているが、過剰に存在すると活性酸素を産生し細胞障害を起こす。
■関連疾患■
ヘモクロマトーシス、急性肝炎、骨髄異形成症候群、巨赤芽球性貧血、再生不良性貧血、鉄芽球性貧血、溶血性貧血、巨赤芽球性貧血、サラセミア、赤芽球癆、急性白血病
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
血漿浸透圧 Sosm,Osm   255 330 280~290 mOsm/L 氷点降下法
血清浸透圧 Sosm,Osm   255 330 270~295 mOsm/L 氷点降下法
【検査項目】浸透圧
■解説■
血漿浸透圧(Posm)はPosm=2×Na(mEq/L)+UN(mg/dL)/2.8+ブドウ糖(mg/dL)/18で表されるため、値はNa、UN、ブドウ糖の量によるがUN/2.8とブドウ糖/18は値として小さいため、Posm=2×Naで簡略化されるので、血漿浸透圧はNaの2倍と考えてよい。浸透圧は細胞の内液と外液の水の移動に関与しているが、この水の移動を決定しているのがNaやブドウ糖である。特にNaは細胞内液量に強く影響するため、低Na血症、高Na血症は細胞機能を傷害し、時に生命に危険が及ぶ場合がある。
■関連疾患■
低値:ADH分泌異常症候群(SIADH)、慢性腎不全、ネフローゼ症候群、うっ血性心不全、肝硬変、心因性多飲、低張性脱水、激しい下痢・嘔吐、副腎皮質機能低下、利尿薬
高値:高張性脱水、尿崩症、糖尿病、アルコール中毒、高尿素窒素血症、本態性高Na血症、浸透圧利尿薬
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
動脈血Co2分圧 Paco,Pco2   20 急性:51
慢性:71
35~45 Toor ガラス電極法
【検査項目】動脈血CO₂分圧(Pco₂)
■解説■
動脈血CO₂分圧(PaCO₂)は動脈血中に溶解しているCO₂の分圧で、肺での換気量の効率化の指標とされる。CO₂分圧は肺胞換気量に逆比例し、換気不足で上昇、過換気で低下する。また、PaCO₂は血漿HCO3-と共に酸塩基平衡に重要な役割を果たしている。肺での換気の低下で高PaCO₂値を認めたら、動脈血pHを測定し、pH<7.4なら呼吸性アシドーシス、pH>7.4なら代謝性アルカローシスへの代償性反応を考える。また、過換気に起因するPaCO₂」低値でpH<7.4なら代謝性アシドーシスへの代償性反応、pH>7.4なら呼吸性アルカローシスを考える。臨床的にはPaCO₂>80mmHgの場合は人工呼吸の適応になるので70mmHgの値を得たら連続して測定し、推移を注視する。
■関連疾患■
低値:呼吸性アルカローシス(pH高値):特発性過換気症候群、脳血管障害、脳炎、髄膜炎、敗血症、肺不全、肺塞栓症、代謝性アシドーシス:腎不全
高値:呼吸性アシドーシス(pH低値):慢性閉塞、肺水腫、肺線維症、肺性心、Pickwickian症候群、Guillan-Barre症候群、多発性硬化症、筋ジストロフィー
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
動脈血O2分圧 Pao,Po2   急性:49
慢性:39
  臥位:
 Po2=100.0-0.4×年齢
座位:
 Po2=100.0-0.3×年齢
Toor ガラス電極法
【検査項目】動脈血O₂分圧(Po₂)
■解説■
動脈血O₂分圧(PaO₂)は動脈血₂動脈血中に溶解したO₂の分圧で、血液中の酸素の利用度を反映している。血液中に溶存している酸素濃度は血液中のPO₂に比例するので、PO₂の測定で血中酸素濃度が推測できる。体内の酸素予備量は1リットル程度と極めて少ないため、酸素の供給が止まると数分で死に至る。
■関連疾患■
肺水腫、肺線維症、神経・筋疾患、間質性肺炎、ニューモシスチス肺炎、先天性心疾患(右-->左シャント)
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
動脈血pH pH   7.10 7.60 7.35~7.45 pH ガラス電極法
【検査項目】動脈血pH
■解説■
血液のpHは7.35から」7.45の極めて狭い範囲に維持されており、7.35以下をアシドーシス、7.45以上をアルカローシスと呼ぶ。血液の酸塩基平衡はHenderson-Hasselbalchの式pH=6.1+log(HCO₃/0.03×PaCO₂)で決定され、HCO₃は代謝性の因子として、PaCO₂は呼吸性の因子としてpH値に影響を与える。pHは高値、低値共に心血管系へ強く影響し、pHが7.00以下、または7.80以上では生命の維持が出来ないため、pH値の変動には細心の注意が必要である。
■関連疾患■
低値:呼吸性アシドーシス(PaCO2>40Toor):慢性閉塞性肺疾患、肺水腫、肺線維症、肺性心、気管支拡張症Pickwickian症候群、代謝性アシドーシス(HCO3-<24meQ/L:糖尿病ケトアシドーシス、腎尿細管性アシドーシス、尿毒症、乳酸アシドーシス、腎不全、激しい下痢、低アルドステロン症
高値:呼吸性アルカローシス(PaCO2<40Toor):過換気症候群、低酸素血症、器質的中枢神経疾患、甲状腺機能亢進症、肝性昏睡、肺塞栓症、代謝性アルカローシス(HCO3-.24meQ/L:激しい嘔吐、胃液吸引、脱水、低K血症、Cushing症候群、Bartter症候群、ミルク・アルカリ症候群、ループ利尿薬
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
血漿HCO3-濃度 HCO3-   9 41 22~26 mmol/L Ilenderson-Hasselbalch
の式から計算
【検査項目】血漿HCO3-濃度
■解説■
重炭酸イオン(HCO₃-)は血液ガスとして測定したpHとPco₂の値からHenderson-Hasselbalchの式を用いて算定される酸・塩基平衡における代謝性因子で、体液中の陰イオンでは、塩素(Cl)に次いで多く、この両者で陰イオンの85%を占めている。重炭酸イオンは塩素と互いに陰イオンの増減を補い合い体液の酸・酸塩基平衡を維持している。体内では、重炭酸イオンは塩基と結合し、その90%は重炭酸塩(NaHCO3₃)として存在し、酸を中和する働きをし、腎からのH+の排泄、肺からのCO₂放出、尿細管での再吸収で調節されている。臨床的には低値の場合は代謝性アシドーシスを、高値の場合は代謝性アルカローシスを考える。
■関連疾患■
低値:代謝性アシドーシス(anion gapが増加):尿毒症、糖尿病ケトアシドーシス、アルコール性ケトアシドーシス、肝不全、(anion gapが正常):激しい下痢、低アルドステロン症、副甲状腺機能亢進症、腎尿細管性アシドーシス
高値:代謝性アルカローシス:激しい嘔吐、原発性アルドステロン症、高Ca血症、低K血症、腎不全、ミルク・アルカリ症候群
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
アニオンギャップ AG     30 10~14 mEq/L AG=Na-Cl-HCO3
【検査項目】アニオンギャップ
■解説■
アニオンギャップ(AG)はAG=Na-Cl-HCO₃で算定される値で、代謝性の酸・塩基平衡の異常の鑑別に使われる。血清中の陽イオンの大部分はNaが占め、K、Ca、Mgなどはわずかであるり、陰イオンはClとHCO₃で85%を占めている。このため、AG値はClとHCO₃以外の陰イオンの変動の指標と考えてよい。このため、乳酸、ピルビン酸、ケト酸、リン酸などの有機酸が血中に増加するとAGが増加するので、AG値は血中での有機酸の蓄積の指標となる。AGの増加は殆どの場合、AG上昇型代謝性アシドーシスと考えてよい。
■関連疾患■
アニオンギャップ上昇型代謝性アシドーシス、代謝性アルカローシス
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
エタノール       3 0.1未満 mg/mL GC
【検査項目】エタノール
■解説■
エタノールは中枢神経に対し強い抑制作用があり、血中濃度により悪心、嘔吐、感覚鈍麻から始まり酩酊、意識消失を経て呼吸麻痺から死に至る。このため、急性アルコール中毒が疑われた時に血中濃度が3mg/mLを超えた場合は、呼吸麻痺の発症を常に頭に入れ、救急処置を行う必要がある。
■関連疾患■
急性アルコール中毒
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
乳酸       45.0 4.0~16.0 mg/dL 酵素法
【検査項目】乳酸
■解説■
乳酸は解糖系代謝経路の最終産物として、ピルビン酸から乳酸脱水素酵素(LD)により嫌気的に産生される物質である。産生は骨格筋、赤血球、脳、皮膚、腸管で、殆どが肝と腎で代謝される。この物資が異常高値となる状態を乳酸アシドーシと呼び、死亡率の高い代謝性アシドーシスに分類される。臨床的にはショックによる循環不全、全身性の代謝障害の際に高値となる。
■関連疾患■
激しい痙攣・筋緊張、ショック、心筋梗塞、低酸素血症、アルカローシス、管理不良の糖尿病、肺栓塞、急性CO中毒、重症肝障害、、尿毒症、ビタミンB1欠乏症、糖原病Ⅰ型
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
遊離サイロキシン Free T4 50歳以上   7.8 0.7~1.5 ng/dL CLIA
遊離サイロキシン Free T4 50歳以下   6.0 0.7~1.5 ng/dL CLIA
【検査項目】遊離サイロキシン(FT4)
■解説■
甲状腺ホルモンはその99%以上がTGBなどの結合蛋白に結合した形で存在し、蛋白と結合しない遊離型は極めて微量で遊離サイロキシンは総サイロキシン量の0.03%に過ぎない。しかし、FT4は標的細胞に入るとトリヨードサイロニン(T3)に転換し、甲状腺ホルモン作用を発揮するため、FT4の濃度は甲状腺機能を評価する最も信頼性のある物資と考えてよい。このため、FT4濃度は甲状腺機能を直接示す指標として、甲状腺機能異常の重症度判定に重要な情報となる。
■関連疾患■
Basedow病、Plummer病、TSH産生腫瘍、無痛性甲状腺炎および亜急性甲状腺炎の病極期、甲状腺ホルモン不応症、T4製剤過剰服用
検査分野
炎症マーカー
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
C反応性蛋白 CRP     10.00 0.2以下 mg/dL ネフェロメトリー
【検査項目】C反応性蛋白
■解説■
CRPは肺炎球菌のC多糖体反応し、沈降するためC反応性蛋白(CRP)と命名されたが、その後炎症患者の血清中に急増することから、急性相反応物質として広く臨床の場で使われるようになった。体内に病原体が侵入したり、組織壊死が起こるとマクロファージが活性化され、インターロイキン-1、インターロイキン-6や腫瘍壊死因子(TNF)などの炎症性サイトカインを放出し、これらのサイトカインが肝に作用してCRPなどの急性相反応物質を産生する。このため、血中CRP濃度は炎症や組織破壊病変の存在、活動性、大きさの指標となる。
■関連疾患■
重症感染症、新生児感染症、悪性腫瘍、心筋梗塞、関節リウマチ活動期
検査分野
脳脊髄液検査
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
細胞数       30 0~5 /μL 計算盤法
【検査項目】細胞数
■解説■
髄液腔は無菌状態であるが、病原微生物が侵入すると、反応性に白血球が増加する。侵入した微生物が細菌の場合は貪食能やオプソニン作用を持つ好中球が、また、ウイルスであれば免疫能を持つリンパ球が増加する。また、脳腫瘍、白血病やリンパ腫の浸潤があれば腫瘍細胞が出現する。細胞数が200/μLを超えると髄液の混濁が見られる。
■関連疾患■
リンパ球増加:ウイルス性髄膜炎、ウイルス性脳炎、脳脊髄炎、結核性髄膜炎、心筋性髄膜炎、神経梅毒、サルコイドーシス、多発性硬化症、神経ベーチェット病
多核白血球増加:化膿性髄膜炎、脳膿瘍、硬膜下膿瘍、脊髄硬膜下膿瘍、真菌性髄膜炎初期、ウイルス性髄膜炎初期
好酸球:肺吸虫、旋毛虫、トキソプラズマ、マラリアなどの寄生虫疾患、結核、梅毒、コクサッキーウイルス、亜急性硬化性全脳炎
異型リンパ球:伝染性単核球症
腫瘍細胞:癌性髄膜炎、白血病、リンパ腫
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
好中球数       10 細胞数の2~3%以下 /μL 計算盤法
【検査項目】好中球数
■解説■
侵入した微生物が細菌の場合は貪食能やオプソニン作用を持つ好中球が増加する。特に、化膿性髄膜炎では髄液の混濁が見られる。
■関連疾患■
化膿性髄膜炎、脳膿瘍、真菌性髄膜炎初期、ウイルス性髄膜炎初期
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
蛋白       50 4~48 mg/dL ピロガロールレッド法
【検査項目】蛋白
■解説■
蛋白が増加するメカニズムは
1.中枢神経系の血管や組織の破綻による血液の流入 
2.血液・髄液関門のバリアが破綻し透過性亢進が亢進した結果としての血漿蛋白の流入 
3.中枢神経系での蛋白合成の亢進 
4.髄液の循環障害の際に見られる。
 通常、蛋白の増加は細胞数の増加と並行するが、ギランバレー症候群やクモ膜下腔閉塞では蛋白量は増加するが、細胞数の増加が目立たない蛋白細胞乖離が見られる。増加する蛋白がγ-グロブリンであれば多発性硬化症、、亜急性硬化性全脳炎、神経梅毒、ギランバレー症候群、神経ベーチェット病が考えられる。
■関連疾患■
化膿性髄膜炎、脳脊髄腫瘍、脊髄腫瘍、脳出血、クモ膜下出血、脳梗塞、脳膿瘍、ギランバレー症候群、多発性神経炎、結核性髄膜炎、無菌性髄膜炎、神経梅毒、多発性硬化症、神経ベーチェット病、亜急性硬化性全脳炎、クモ膜下腔閉塞
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
    5   50~75 mg/dL 酵素法
【検査項目】糖
■解説■
髄液中の糖は血液中の等に由来したもので、1時間から4時間前の血中の糖の濃度を反映し、血糖値の60~70%の値を示す。髄液中の糖の濃度の低下は髄液中の微生物や細胞による糖の消費が原因であり、特に化膿性髄膜炎では低下が著明で、多くの場合20mg/dL以下になる。
■関連疾患■
急性化膿性髄膜炎、結核性髄膜炎、真菌性髄膜炎、癌性髄膜炎
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
悪性細胞の出現              
【検査項目】悪性細胞の出現
■解説■
悪性細胞の出現は癌性髄膜炎や白血病、リンパ腫の髄膜浸潤による。
■関連疾患■
癌性髄膜炎、白血病、リンパ腫
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
グラム染色、
培養、
墨汁標本陽性
             
【検査項目】グラム染色、培養、墨汁標本陽性
■解説■
髄液中に出現する細菌は髄膜炎菌、結核菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、緑膿菌、変形菌、セラチア、インフルエンザ菌、リステリア菌、レプトスピラが挙げられる。真菌はクリプトコッカスが、また原虫はトキソプラズマが見られる。クリプトコッカス髄膜炎を疑えば、墨汁染色(インデアンインク染色)を行う。また、HIV感染者はクリプトコッカスと結核菌の感染に注意する。
■関連疾患■
細菌、真菌(クリプトコッカス)、原虫(トキソプラズマ)、ウイルスによる髄膜炎・脳炎
検査分野
尿検査
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
尿糖       強陽性 陰性   試験紙法
【検査項目】尿糖
■解説■
健常者では一日に尿中に排泄される糖の量は2~20mg/dL(40~85mg/day)であり、試験紙の感度は約100mg/dLであるので陰性である。尿糖は糖代謝異常により血糖値が上昇した場合や腎の糖排出閾値(血糖値160~180g/dL)が低下した場合に陽性となる。非糖尿病性の尿糖陽性は500人に1人といわれているので、尿糖値がパニック値を示す場合は、糖尿病を第一に考える。パニック値である試験紙強陽性は4+で、定量値5g/dL以上に相当する。
■関連疾患■
糖尿病
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
ケトン体       強陽性 陰性   試験紙法
【検査項目】ケトン体
■解説■
ケトン体はアセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸の総称であるが、試験紙では前2者のみが測定可能である。このうちアセトンは呼気中に排出されるため血中にはほとんど存在しないので、尿中ケトン体はアセト酢酸と考えてよい。血中ケトン体の上昇がケトアシドーシスであり、尿中ケトン体は血中ケトン体の濃度を反映しているため、尿中ケトン体の測定はケトアシドーシスのスクリーニング検査として、糖尿病の重症度の簡易判定法としての有用性が高い。ケトアシドーシスでは血液が酸性に傾き、放置すれば呼吸困難、意識障害、昏睡を来す。
■関連疾患■
糖尿病性ケトアシドーシス
検査項目 略語 年齢 パニック値
:以下
パニック値
:以上
基準値 単位 測定法
結晶成分 シスチン、
ロイシン、
チロシン、
ビリルビンの存在
      出現しない   顕鏡法
【検査項目】結晶成分
■解説■
尿中に出現する結晶成分はリン酸塩、尿酸アンモニウム、尿酸、尿酸塩、シュウ酸Caなどが良く見られるが、臨床的意義は殆どない。病的結晶としてはシスチン尿症(シスチン結晶)、重症肝障害(チロシン結晶、ロイシン結晶、ビリルビン結晶)、ネフローゼ症候群(コレステロール結晶)、APRT先天欠損症(DHA結晶)が挙げられる。
■関連疾患■
シスチン尿症、重症肝障害、ネフローゼ症候群、アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)先天欠損症
検査分野
微生物検査
検体 細菌・ウイルス・真菌
血液・脳脊髄液・脳組織・羊水 全ての細菌・ウイルス・真菌
【検体】血液
■検出される主な菌種■
ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、腸球菌、ヘモフィルス、サルモネラ、大腸菌、緑膿菌、嫌気性菌、キャンピロバクター、ブルセラ
【検体】脳脊髄液
■検出される主な菌種■
髄膜炎菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌、ヘモフィルス、結核菌、リステイア、クリプトコッカス、緑膿菌、大腸菌
【検体】漿膜腔液
■検出される主な菌種■
連鎖球菌、肺炎球菌、ブドウ球菌、結核菌、大腸菌、緑膿菌、嫌気性菌
検体 細菌・ウイルス・真菌
全ての検体から検出(細菌) 結核菌、コレラ菌、ジフテリア菌、赤痢菌、炭疽菌、腸管出血性大腸菌、腸チフス菌、パラチフス菌、ブルセラ属、ペスト菌、ボツリヌス菌、野兎病菌、Burkholderia pseudomallei、Coxiella burnetii
【検体】全ての検体から検出(細菌)
■検出される主な菌種■
ペスト菌結核菌ジフテリア菌コレラ菌、赤痢菌、腸管出血性大腸菌、腸チフス菌、パラチフス菌、炭そ菌、ブルセラ属、ボツリヌス菌、野兎病菌、Burkholderia pseudomalleiCoxiella burnetii

赤太字:1類感染症青太字:2類感染症黒太字:3類感染症
検体 細菌・ウイルス・真菌
全ての検体から検出(ウイルス) エボラ出血熱ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、天然痘ウイルス、痘そうウイルス、鳥インフルエンザウイルス(H5N1、H7N9)、ポリオウイルス、ラッサ熱ウイルス、マールブルグ出血熱ウイルス、SARSコロナウイルス
【検体】全ての検体から検出(ウイルス)
■検出される主な菌種■
エボラ出血熱ウイルス、クリミア・コンゴ出血熱ウイルス、痘そうウイルス、ラッサ熱ウイルス、マールブルグ出血熱ウイルス、南米出血熱ウイルス鳥インフルエンザウイルス(H5N1、H7N9)、ポリオウイルス、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス

赤太字:1類感染症青太字:2類感染症
検体 細菌・ウイルス・真菌
全ての検体から検出(真菌) ブラストミセス属、コクシジオイデス属、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ニューモシスチス・イロベチイ、Histoplasma capsulatum、Cryptococcus gattii
【検体】全ての検体から検出(真菌)
■検出される主な菌種■
ブラストミセス属、コクシジオイデス属、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、ニューモシスチス・イロベチイ、Histoplasma capsulatumCryptococcus gattii
検体 細菌・ウイルス・真菌
新生児(1ヶ月以下)の検体から検出 単純ヘルペスウイルス、百日咳菌
【検体】新生児(1ヶ月以下)の検体から検出
■検出される主な菌種■
単純ヘルペスウイルス、百日咳菌
検体 細菌・ウイルス・真菌
大腸菌O-157抗原スクリーニング陽性  
【検体】大腸菌O-157抗原スクリーニング
■解説■
腸管出血性大腸菌はO157抗原の他、O26、O128、O145など様々な血清型が分離されるが、その60~80%はO157である。腸管出血性大腸菌O157感染症はベロ毒素による出血性大腸炎、急性胃腸炎、溶血性尿毒症症候群、急性脳症などを引き起こすが、O157の1/3はベロ毒素非産生菌といわれている。このため、O157抗原が検出されたら、ベロ毒素の検出を急ぐ。
検査分野
輸血検査
検体
臍帯血・新生児直接クームス試験陽性
【検査項目】臍帯血・新生児直接クームス試験陽性
■解説■
赤血球に対する不完全抗体の有無を見る検査で、自己免疫性溶血性貧血ではほぼ全例で陽性になる。血液型不適合妊娠の新生児は、新生児溶血性貧血の可能性があるので、早期に直接クームス試験を行う。
検体
赤血球不規則抗体の出現
【検査項目】赤血球不規則抗体の出現
■解説■
輸血前検査は不適合輸血を防ぐために受血者(患者)のABO血液型、D抗原と不規則抗体スクリーニング検査を行なう。このスクリーニング検査はABO以外の血液抗原に対する不規則抗体で、臨床的に副作用を起こす可能性のある抗体の検出が目的である。スクリーニング検査が陽性であれば、抗体の同定検査を行なう。
検体
不適合輸血を示唆する輸血反応
【検査項目】不適合輸血を示唆する輸血反応
■解説■
ABO型不適合輸血では、輸血後5分以内に、血管に沿った熱感、疼痛を訴える。顔面は紅潮し、その後蒼白となり、胸内苦悶、呼吸困難、頻脈、胸痛、腹痛が生じ、悪寒、戦慄とともに発熱する。最終的には、血圧低下、ショックを引き起こす。ABO型以外の不適合輸血(Rh系,Kidd系など)は、輸血後3~21日に遅発性に溶血が見られるのが特徴的な所見であるが、通常症状は軽く、ショックを引き起こすことは少ない。
検査分野
薬物
  パニック値
:以下
パニック値
:以上
治療有効濃度範囲 単位 中毒症状 適応症
アセトアミノフェン4時間値>200、12時間値>505 ~20μg/mL摂取後12~24時間以内に悪心、嘔吐、食欲不振、発汗などの症状が見られる。服用後4時間値が200μg/mL、12時間値が50μg/mL以上の場合は重症の肝障害を生じる危険がある。頭痛、耳痛、症候性神経痛、腰痛、筋肉痛、打撲痛、捻挫痛、月経痛、分娩後痛、がんによる疼痛、歯痛、歯科治療後の疼痛、急性上気道炎の解熱・鎮痛、小児の解熱・鎮痛
アプリンジン2.00.25~1.25μg/mL中毒域は約2.0μg/ml以上とされ、症状は不整脈、PQ,QRS,QT延長、徐脈、動悸、振戦、めまい、ふらつき、痙攣、しびれ感、抑うつ状態、眠気、視力異常、緑視、複視、悪心、嘔吐、食欲不振、口渇、腹痛、顆粒球減少症などである。頻脈性不整脈
アミオダロン5.0トラフ値:1.0~2.5μg/mLアミオダロンを服用している患者の約45%は、副作用が出現するが、重大な副作用には、間質性肺炎、肺線維症、不整脈、徐脈、肝機能障害、甲状腺機能障害があげられる。高齢者は呼吸機能、肝機能および腎機能が低下していることが多いので、副作用が発現しやすい。生命に危険のある心室細動、心室性頻拍、肥大型心筋症に伴う心房細動の再発性不整脈
アミカシンピーク値:35、トラフ値:10ピーク値:20~25、トラフ値:10以下μg/mL副作用は、腎機能障害、聴力障碍、前庭障害、神経筋ブロック、悪心、嘔吐、頭痛、顆粒球減少、再生不良性貧血などがある。耳毒性はピーク値で、また、腎毒性はトラフ値でチェックする。ゲンタマイシン耐性の緑膿菌、変形菌、セラチア、大腸菌、クレブシエラ、エンテロバクター、シトロバクターのうちアミカシン感受性菌による敗血症、気管支拡張症の感染時、肺炎などの治療
アミトリプチリン500100~250μg/mL中毒症状は、投与30分~2時間後に、中枢神経症状として眠気、昏迷、運動失調、手指の振戦が、また、不整脈、頻脈、伝導障害などの心症状や呼吸抑制、血圧低下、乏尿、無尿なども見られる。精神科領域におけるうつ病・うつ状態、夜尿症、末梢性神経障害性疼痛
アルベカシンピーク値:12、トラフ値:2ピーク値:8~12、トラフ値:2以下μg/mLピーク値が12μg/mLを超える状態が続くと、耳鳴、めまい、耳閉感などの症状が、また、トラフ値が2μg/mL以上の状態が続くと腎障害が現れ、UNやクレアチニンが上昇する。メチシリン、セフェム耐性の黄色ブドウ球菌のうちアルベカシン感受性菌による敗血症と肺炎
イミプラミン500100~350μg/mL中毒症状は、通常服用30分~2時間後に高度の抗コリン作用が主症状として出現する。その後、中枢神経系症状として眠気、昏迷、意識障害、運動失調、情動不安、激越、反射亢進、筋強剛、アテトーシス及び舞踏病アテトーシス様運動、痙攣、セロトニン症候群が、また心血管系症状として低血圧、不整脈、頻脈、伝導障害、ショックが見られる。その他の症状としては呼吸抑制、チアノーゼ、嘔吐、散瞳、発汗、乏尿、無尿等が挙げられる。精神科領域におけるうつ病・うつ状態、遺尿症
エトスクシミド100トラフ値:40~100μg/mL100μg/mL以上で中毒症状が発現するが、100μg/mL付近の濃度では悪心、嘔気、眠気、運動失調などが見られ、濃度が上昇すると嗜眠、幻覚、妄想などを発現する。また、濃度非依存性の副作用として、再生不良性貧血、汎血球減少症、SLE様症状などが知られている。定型欠神発作(小発作)、小型(運動)発作
カルバマゼピン15トラフ値:4~12μg/mL中毒発現の濃度は、15μg/mLとされているが、個人差が大きい。中毒症状はめまい、振戦、興奮、痙攣、意識障害、運動失調、鎮静、複視、眼振が濃度依存性に、また、肝障害、再生不良性貧血、白血球減少などが濃度非依存性に起こる。てんかん、躁病、躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛
カルバマゼピン(遊離)4.0トラフ値:0.3~1μg/mL中毒発現の濃度は、4.0μg/mLとされているが、個人差が大きく0.4μg/mLの濃度でも中毒症状が現れることがある。中毒症状は、めまい、振戦、興奮、痙攣、意識障害、運動失調、鎮静、複視、眼振が濃度依存性に、また、肝障害、再生不良性貧血、白血球減少などが濃度非依存性に起こる。てんかん、躁病、躁うつ病の躁状態、統合失調症の興奮状態、三叉神経痛
キニジン6.0トラフ値:2.3~5.0μg/mL副作用発現濃度は、6.0μg/ml以下で0.1%未満、6~8μg/mlで12%、8~12μg/mlで30%、14μg/ml以上では45%以上で、特に高齢者や低K血症の患者は副作用が出やすい。症状は、伝導障害、QT延長、めまい、失神、下痢、悪心、嘔吐などである。期外収縮、 心房粗動、新鮮心房細動、陳旧性心房細動、発作性頻拍
クロナゼパム100トラフ値:10.0~70.0 ng/mL100ng/mLを超えると発現する中毒症状は、眠気、嗜眠、昏睡、運動失調など中枢神経系の抑制、遷延昏睡、血圧低下、呼吸抑制、低体温などであるが、高齢者では特に昏睡に注意する。ミオクロヌス発作、自律神経発作、失立発作、精神運動発作、点頭てんかん
ゲンタマイシンピーク値:12、トラフ値:2ピーク値:5~10、トラフ値:2以下μg/mLピーク値12μg/mL以上、トラフ値2μg/mL以上が繰り返されると腎機能障害、前庭障害、聴力障害、神経筋ブロック、過敏症状などの中毒症状が発現するとされている。主に緑膿菌をはじめとしたグラム陰性桿菌感染症
サリチル酸350トラフ値:150~300μg/mL有効血中濃度は、疾患によって異なり、鎮痛効果は100以上、リウマチ性関節炎では150~300以上、小児の急性リウマチ熱では300~400μg/mLが必要である。350 μg/mLを超えると過呼吸、呼吸性アルカローシス、代謝性アシドーシス、昏睡、ショックを発症する。頭痛、腰痛、月経痛、歯科領域の疼痛などの鎮痛、急性上気道炎の解熱・鎮痛、関節リウマチ、変形性関節症、狭心症、心筋梗塞、虚血性脳血管障害における血栓・塞栓形成の抑制、川崎病
ジギトキシン35トラフ値:10~25ng/mL中毒症状は、35ng/ml以上で発現するが、治療域またはそれ以下でも、低K血症などを合併する場合は中毒が生じうる。症状は、食欲不振、悪心、嘔吐、不整脈、頻脈、高度の徐脈、黄視、めまい、頭痛、失見当識、錯乱、発疹、蕁麻疹、紫斑、浮腫などである。うっ血性心不全、虚血性心疾患、甲状腺機能亢進症・低下症、高血圧症、心房粗動・細動による頻脈、肺性心、発作性上室性頻拍、弁膜疾患
シクロスポリン300トラフ値:50~250ng/mL臓器移植患者への投与の際には、過量投与による副作用の発現を防ぐために、移植直後は頻回に、その後は月に一回程度の血中濃度測定が必要である。中毒症状としては、ショック、腎障害、肝障害、中枢神経系障害、感染症、急性膵炎、血栓性微小血管障害、溶血性貧血、血小板減少、横紋筋融解症、悪性リンパ腫、リンパ増殖性疾患、皮膚の悪性腫瘍、神経Behçet病症状が挙げられる。腎移植、肝移植、心移植、肺移植、膵移植における拒絶反応の抑制、Behçet病、ネフローゼ症候群、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬、尋常性乾癬、膿疱性乾癬、重症再生不良性貧血、赤芽球癆
ジゴキシン70歳以下:2.5、70歳以上:2.0トラフ値:0.8~2.0ng/mLこの薬剤は、有効治療濃度が約0.8~2.0ng/mLと狭く、吸収・排泄や心筋感受性は個人差が大きいので、中毒発現の発見には血中濃度の測定が重要である。中毒症状は、2.6ng/ml以上では全例に出るといわれている。症状としては、食欲不振、悪心、嘔吐、高度の徐脈、二段脈、多源性心室性期外収縮、黄視、めまい、頭痛、失見当識、錯乱などが見られる。また、腎排泄のため腎機能障害例ではジギタリス中毒を来しやすい。うっ血性心不全、肺性心、甲状腺機能亢進症・低下症、心房粗・細動による頻脈、発作性上室性頻拍など
ジソピラミド7.0トラフ値:2.0~5.0μg/mL7.0μg/mL以上で、顕著なQT間隔延長、刺激伝導障害、心室粗動・細動、心室頻拍、房室ブロック、洞停止、失神などが見られる。期外収縮、発作性上室性頻脈、心房細動
シベンゾリンピーク値:800、トラフ値:250ピーク値:200~750、トラフ値:60~250ng/mLピーク値が800ng/mL、トラフ値が250ng/mL以上では、心室細動、上室性不整脈、PQ,QRS,QT延長、房室ブロック、脚ブロック、徐脈、血圧低下、洞結節機能低下、動悸、尿閉、排尿困難、霧視、光視症、頭痛、頭重、めまい、ふらつき、立ちくらみ、眠気、振戦、幻覚、口渇、食欲不振、便秘、悪心、嘔吐、腹痛、腹部不快感、口内炎、低血糖、腎不全などの症状が見られる。頻脈性不整脈
ゾニサミド40トラフ値:10~30μg/mL40μg/mL以上になると傾眠、無気力、自発性低下、眼振、複視、振戦、構音障害、運動失調などの中毒症状が見られる。強直発作、自立神経発作、焦点発作、精神運動発作、全身痙攣発作、大発作、二次性全般化強直間代痙攣、非定型欠伸発作
タクロリムス30トラフ値:5~20ng/mL中毒症状としては、嘔吐、振戦、痙攣、高血糖、腎障害が見られる。ループス腎炎、関節リウマチ、骨髄移植における拒絶反応、全身型重症筋無力症
テイコプラニン60トラフ値:5~10μg/mL60μg/mLを超えると、ショック、アナフィラキシー様症状、第8脳神経障害(眩暈、耳鳴、耳閉感、難聴)、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症、脱落性皮膚炎、顆粒球減少、白血球減少、血小板減少、急性腎不全、肝機能障害などが見られる。メチシリン、セフェム耐性の黄色ブドウ球菌のうちテイコプラニン感受性菌による感染症
テオフィリン20トラフ値:8~20(成人)、5~15(小児)μg/mL20μg/mL以上になると、消化器症状や心拍数増加などの中毒症状の発現率が高くなり、40μg/mLを超えると中枢症状、不整脈、痙攣などが現れ、死に至る場合もある。気管支喘息、慢性気管支炎、肺気腫、喘息様気管支炎
トブラマイシンピーク値:12、トラフ値:2以上ピーク値:5~10、トラフ値:2以下μg/mLピーク値が12μg/mLを超えた状態が続くと、耳鳴、めまいなどが見られ、最終的には聴覚障害をきたす。また、トラフ値が2μg/mL以上の状態が続くと腎機能障害をきたす。聴覚障害は不可逆的であるが、腎機能障害はクレアチニン値上昇などの検査所見で、早期に投与を中止すれば可逆的である。緑膿菌などのグラム陰性桿菌感染症
トリメタジオントリメタジオン:50、ジメタジオン:1500トリメタジオン:40、ジメタジオン:500~1200μg/mL中毒症状は眠気から始まり、複視、全身倦怠感、めまいなどを訴える。重大な副作用として皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死症、SLE様症状、再生不良性貧血、汎血球減少症、筋無力症などが知られている。ミオクロニー発作、失立(無動)発作、定型欠伸発作(小発作)、点頭てんかん
ニトラゼパム200トラフ値:80~200ng/mL200μg/mLを超えると鎮静、眠気、運動失調、食欲不振、全身倦怠感、呼吸抑制、CO2ナルコーシス、昏睡がみられる。異型小発作、焦点発作
バルブロ酸Na150トラフ値:50~100μg/mL抗てんかん薬の一種で、90%は肝で代謝され、5%は変化せずに尿中に排泄され、蛋白結合率は85~95%と高い。150μg/mL以上では高アンモニア血症、肝障害、高血糖などをを引き起こす。てんかん発作(混合発作、小発作、焦点発作、精神運動発作)
バルブロ酸(遊離)30トラフ値:5~15μg/mL遊離バルブロ酸5~15μg/mLはバルブロ酸50~150μg/mLに相当する。中毒症状はバルブロ酸と同じである。肝で代謝され、アルブミンとの結合率が高い。てんかん発作(混合発作、小発作、焦点発作、精神運動発作)
バンコマイシントラフ値:20、ピーク値:50トラフ値:10~15、ピーク値:25~40μg/mL重大な副作用として、ショック、アナフィラキシー様症状、急性腎不全、間質性腎炎、汎血球減少、顆粒球減少、血小板減少、Stevens-Johnson症候群、中毒性表皮壊死症、剥脱性皮膚炎,第8脳神経障害(眩暈,耳鳴,耳閉感,難聴)、偽膜性大腸炎、肝機能障害、黄疸などが知られている。腎障害はトラフ値が20μg/mLを超える状態が続くと発症する。また、トラフ値が30μg/mLを超える状態が持続されると聴神経障害を引き起こす可能性がある。メチシリン、セフェム耐性の黄色ブドウ球菌のうちバンコマイシン感受性菌による感染症
ピルジカイニド1.00.2~0.9μg/mL1.0μg/mLを超えると心室細動、心室頻拍、心房細動、期外収縮増多、QRS幅の増大、QT延長、房室ブロック、洞房ブロック、徐脈、洞停止、動悸、胸部不快感や食欲不振などの消化器症状、めまい、頭痛などの神経症状がみられる。頻脈性不整脈
フェニトイン30トラフ値:10~20μg/mL中毒症状は、濃度依存性に発症し、30μg/mL以上lで運動失調、注意力・集中力・反射運動能力などの低下、40μg/mL以上で傾眠、構音障害を、また、70μg/mL以上では昏睡を来す。真性てんかん(痙攣発作、特に大発作)、てんかんの痙攣発作(強直間代発作、焦点発作)、自律神経発作、精神運動発作
フェニトイン(遊離)3トラフ値:1~2μg/mL遊離フェニトイン1~2μg/mLはフェニトイン10~20μg/mLに相当するので、3μg/mLを超えると中毒症状が見られる。真性てんかん(痙攣発作、特に大発作)、てんかんの痙攣発作(強直間代発作、焦点発作)、自律神経発作、精神運動発作
フェノバルビタール60トラフ値:10~35μg/mL60μg/mLを超えると、昏睡、呼吸抑制、血圧低下、体温降下などの重大な中毒症状が現れる。100μg/mL以上は致死濃度とされる。不眠症、不安・緊張状態の鎮静、てんかんの痙攣発作(強直間代発作、焦点発作)、自律神経発作、精神運動発作
プリミドン15トラフ値:5~12μg/mL15μg/mLを超えると頭痛、運動失調、錯乱、神経過敏などを訴え、50μg/mLを超えると運動失調、昏睡を来す。てんかんの痙攣発作、 小型運動発作、 精神運動発作
フレカイニド1.00.2~1.0μg/mL1.0μg/mLを超えた状態が続くとPQ,QRS,QT延長、房室ブロック、徐脈、胸部不快感、血圧低下、めまい、ふらつき、頭痛、手足のしびれ、眠気、耳鳴、羞明、複視、霧視、視力障害、悪心、嘔吐、腹痛、腹部膨満感、食欲不振、口渇、下痢、便秘、口内炎などの症状がみられる。頻脈性不整脈
プロカインアミド16トラフ値:4~10μg/mL16μg/mLを超えると、中毒症状の発現率が高くなる。中毒症状として心室頻拍、心室粗・細動、心不全、心収縮力低下、血圧下降、発熱、紅斑、関節炎、筋肉痛、多発性関節痛、悪心、嘔吐、食欲不振、下痢、頭痛、不眠、幻視、幻聴、顆粒球減少、血小板減少、好酸球増加、発疹、悪寒、発熱などがみられる。期外収縮、発作性頻拍の治療および予防、新鮮および陳旧性心房細動、発作性心房細動の予防、急性心筋梗塞における心室性不整脈の予防、手術および麻酔に伴う不整脈の予防、電気ショック療法との併用およびその後の洞調律の維持
ブロムペリドール154~15ng/mL中毒症状は血圧降下、頻脈、心室頻拍、眠気、めまい、肝障害、悪性症候群、麻痺性イレウス、遅発性ジスキネジア、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群、錐体外路症状などである。統合失調症
メキシレチン20.5~2μg/mL2μg/mL以上で悪心、嘔吐、食欲不振、胸やけ、胃・腹部不快感、めまい、しびれ感、眠気、頭痛、振戦、心室頻拍、徐脈、QRS延長、血圧上昇、動悸などがみられる。重大な中毒症状として中毒性表皮壊死症、Stevens-Johnson症候群、紅皮症、幻覚などがある。心室性の頻脈不整脈、糖尿病神経障害に伴う自発痛、しびれ感の改善
メトトレキサート24時間値:10μM、48時間値:1μM、72時間値:1μM血中濃度測定は体外排泄状況の把握と副作用発生の予測の目的で行う。中毒症状は骨髄抑制による白血球減少と血小板減少であるが、重症例では汎血球減少症を発症する。そのほか、肝障害、腎障害、間質性肺炎、皮膚障害、腸炎、膵炎、骨粗鬆症、痙攣、片麻痺、失語、昏睡、痴呆、麻痺、Guillain-Barré症候群などをきたす。悪性リンパ腫、急性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、肉腫、乳癌(CMF療法)、尿路上皮癌(M-VAC療法)、絨毛性疾患
リチウム1.5トラフ値:0.4~1.2mEq/Lリチウムの薬理効果は脳内の濃度に依存し、脳内濃度は血中濃度と平衡関係にある。副作用は、1.5mEq/Lを超えると手指の振戦、口渇、多飲などが見られ、次いで嘔吐、下痢、食欲不振、運動失調、頭痛などを訴え、2.5mEq/Lを超えると中毒症状である昏睡、意識障害、譫妄、全身痙攣、乏尿、急性循環不全に至る。躁病および躁うつ病の躁状態
リドカイン62~5μg/mL6μg/mLを超えると中枢神経系症状としての振戦、痙攣、眠気、不安、興奮、悪心、嘔吐などや心血管系症状としての刺激伝導系の抑制、血圧低下、ショック、脈拍異常、呼吸抑制などがみられる。硬膜外麻酔、伝達麻酔、浸潤麻酔、表面麻酔などの麻酔薬、期外収縮、発作性頻拍、急性心筋梗塞時および手術に伴う心室性不整脈の予防
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