疾患解説
フリガナ | キュウセイリンパセイハッケツビョウ |
別名 | 急性白血病 |
臓器区分 | 血液・造血器疾患 |
英疾患名 | Acute Lymphocytic Leukemia(ALL) |
ICD10 | C91.0 |
疾患の概念 | 急性リンパ性白血病は、最も頻度の高い小児癌であるが、あらゆる年齢の成人にも見られる。骨髄でリンパ系細胞が腫瘍化し増殖する疾患で、血液中に芽球が増加し、白血病細胞による正常な骨髄の置換、中枢神経系および腹部臓器への白血病細胞浸潤が生じる。全症例の2/3は2~10歳の小児であるが、45歳以上との二峰性分布がみられる。中枢神経系と腹部臓器への白血病細胞浸潤により、様々な病態を呈する。B細胞性、成熟細胞性(Burkittリンパ腫)、T細胞性の3種に分けられる。 |
診断の手掛 | 急激に発症する全身倦怠感、貧血症状、発熱(好中球減少)、出血症状(血小板減少)を訴える患者を診たら本症を疑う。また、上下肢痛が唯一の症状であることもあるので注意する。 |
主訴 |
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness 肝腫大|Hepatomegaly 顔面蒼白|Pallor of face 紫斑|Purpura 出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis 全身倦怠感|General malaise/Fatigue 点状出血|Petechiae 動悸|Palpitations 発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever 脾腫|Splenomegaly 貧血症状|Anemic symptom リンパ節腫脹|Lymphadenopathy |
鑑別疾患 |
ビタミンB12欠乏症|Vitamin B12 Deficiency 葉酸欠乏症|Folic Acid Deficiency 肺炎|Pneumonia 敗血症|Sepsis 骨髄異形成症候群|Myelodysplastic Syndrome 骨髄増殖性疾患 骨髄線維症|Myelofibrosis 再生不良性貧血|Aplastic Anemia 伝染性単核球症|Infectious Mononucleosis |
スクリーニング検査 |
Albumin|アルブミン [/S] Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/S, /WBC] Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S] Calcium|カルシウム [/S, /S, /U] CEA|癌胎児性抗原 [/S] Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S, /S] Creatinine|クレアチニン [/S] Ferritin|フェリチン [/S] Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P] Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF] HDL-Cholesterol|HDL-コレステロール/高比重リポ蛋白コレステロール [/S] Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B] Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B] Immunoglobulin A|免疫グロブリンA [/S] Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S] Iron|鉄/血清鉄 [/S] Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S] Leukocytes|白血球数 [/B, /B] Monocytes|単球 [/B, /B] Neutrophils|好中球 [/B] Phosphate|無機リン [/S, /U] Platelets|血小板 [/B, /B] Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF, /PlF] Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S] Sodium|ナトリウム [/S] Triglycerides|トリグリセリド/中性脂肪/トリグリセライド/トリアシルグリセロール [/S] Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S] Uric Acid|尿酸 [/S, /U] α1-Globulin|α1-グロブリン [/S] α2-Globulin|α2-グロブリン [/S] β-Globulin|β-グロブリン [/S] |
異常値を示す検査 |
1-Methylinosine [/U] Acetylspermidine [/U] Adenosine|アデノシン [/P] Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/Lymphocytes, /Lymphocytes, /S] Adenylate Cyclase|アデニル酸シクラーゼ [/Lymphocytes] Alkaline Phosphatase Isoenzymes|アルカリホスファターゼアイソザイム/ALPアイソザイム [/S] Alkaline Phosphatase, Placental Isoenzyme|胎盤型アルカリホスファターゼ [/S] Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S] Apolipoprotein A-I|アポリポ蛋白A-I [/S] Apolipoprotein B|アポリポ蛋白B [/S] B lymphocyte surface membrane Immunoglobulin|B細胞表面免疫グロブリン/B細胞受容体 [/Lymphocytes] CD8+ Lymphocytes [/B] Cells [/Bone Marrow, /CSF] Cold Agglutinins|寒冷凝集反応/寒冷血球凝集反応 [/S] Copper|銅 [/S] Creatine|クレアチン [/S, /U] Erythropoietin|エリスロポエチン [/S, /U] Granulocyte Colony Stimulating Factor|顆粒球コロニー刺激因子 [/S] Granulocyte-Macrophage Colony Stimulating Factor|顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 [/S] Guanylate Cyclase|グアニル酸シクラーゼ [/Lymphocytes] HDL2-Cholesterol|HDL2,3-コレステロール/HDLコレステロール亜分画 [/S] HDL3-Cholesterol|HDL2,3-コレステロール/HDLコレステロール亜分画 [/S] Hepatocyte Growth Factor|肝細胞増殖因子 [/S] Heterophil Antibody|異好抗体 [/S, /S] Hypoxanthine|ヒポキサンチン [/S] Inosine|イノシン [/S] Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S] Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S] Laminin|ラミニン [/S] Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [/S] Manganese Superoxide Dismutase [/S] Myelin Basic Protein|ミエリン塩基性蛋白/EAE起炎性蛋白 [/CSF] N-Acetylputrescine [/U] N2,N2-Dimethylguanosine [/U] Naphthol-As-D-Chloroacetate Esterase [/Granulocyte] Neopterin|ネオプテリン [/U] Nitrate plus Nitrite [/CSF] Philadelphia Chromosome|フィラデルフィア染色体 [Positive/Blood] Phosphoglucomutase|ホスホグルコムターゼ [/S] Plasminogen Activator Inhibitor-1|プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1 [/CSF] Protein Z|プロテインZ/プロテインゼット [/P] Purine Nucleoside Phosphorylase [/Lymphocytes, /Lymphocytes] Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B] Soluble c-kit Molecule [/S] Soluble CD8+ [/S] Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S] Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S, /S] Soluble L-Selectin|可溶性L-セレクチン/可溶性CD62L/可溶性LECAM-1/可溶性白血球内皮細胞接着分子-1 [/S] Soluble Urokinase Receptor [/S] Spermidine|スペルミジン [/CSF, /RBC] Spermine|スペルミン [/RBC] Terminal Deoxynucleotidyl Transferase|TdT活性 [/Lymphocytes] Thymidine Kinase [/S] Tissue Factor Antigen|組織因子/組織トロンボプラスチン [/P] Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S] Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [/P] Vitamin B12 Binding Capacity|ビタミンB12結合能 [/S] VLDL-Cholesterol [/S] Zinc|亜鉛 [/S] α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S] α2-HS Glycoprotein|α2-HSグリコプロテイン [/S] β2-Macroglobulin [/S] β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/CSF, /S] |
関連する検査の読み方 |
【B細胞表面免疫グロブリン】 増加する。S-IgはB細胞のみに存在している免疫グロブリンであり、その検出はB細胞の最も信頼できるマーカーである。この検査はB細胞膜表面に発現している免疫グロブリンを各種の抗体を用いて特定し細胞の分化過程の同定とモノクロナリティーの確認を行うことで、B細胞性白血病やB細胞性リンパ腫の同定や体液性免疫不全症の病態把握に用いられる。 【CBC】 患者の50%は白血球が増加、50%は基準範囲内か減少と一定しない。患者の90%に重度の貧血がみられる。血小板減少が患者の80%に認められる。末梢血液中にリンパ芽球を認める。 【骨髄像】 50%を超えるリンパ芽球を認める。 【FAB分類】 L1、L2、L3に分類される。 【パス染色】 患者の50%以上で陽性である。粗大顆粒状または帯状を呈する。細胞内にグリコーゲンやムコ蛋白があるとSchiff試薬中の塩基性フクシンが反応し赤色または紫紅色の物質が形成される。この色素の出現を観察し白血病細胞の芽球をリンパ性、骨髄性、単球性に鑑別する。急性リンパ性白血病では粗大顆粒状、赤白血病の巨赤芽球様細胞はびまん性~顆粒状に染色される。 【ペルオキシダーゼ染色】 3%未満ならALLに分類される。 【ミエロペルオキシダーゼ染色】 陰性である。 【ズダンブラックB染色】 陰性である。 【PCR】 bcr/ablキメラ遺伝子、IgH遺伝子再構成、TCR遺伝子再構成でPh陽性ALL、B細胞性ALL、T細胞性ALLの診断が確定できる。 【免疫関連遺伝子再構成】 B細胞性ALLで再構成を認める。 【major BCR-ABLキメラmRNA】 major BCR/ABLキメラmRNAがPh転座型のALLで陽性で、50コピー/0.5μgRNA以上検出される。この検査は白血病細胞から抽出したRNAを使い、major BCR-ABLキメラmRNAの有無を調べるものである。major BCR-ABLキメラmRNAが検出されれば、BCR遺伝子領域内が切断されABL遺伝子と融合し、白血病の発病に関与していることが証明される。これにより、癌遺伝子の変異が直接検出され癌の病因診断が可能となる。臨床的には慢性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病の治療後に残存する微小病変(細胞)の追跡、CMLやALL細胞の特異的高感度マーカーとして用いる。 【髄液一般検査】 髄膜侵襲の比率が高いので、蛋白、細胞数の増加を認めることがある。白血病細胞が出現することもある。 【TdT活性】 ALLのほぼ全例で陽性である。TdTはDNA合成酵素で殆どが胸腺皮質リンパ球とリンパ芽球様細胞に存在する。また、悪性のpre B細胞、pre T細胞と白血病細胞にも見られる。臨床的にはリンパ性の腫瘍性疾患、急性リンパ球白血病、慢性骨髄性白血病の急性リンパ球性転化細胞などの診断に用いる。 【デオキシチミジンキナーゼ活性】 著明に増加する。TKは細胞のDNA合成期に上昇するため、細胞再生、ウイルス感染細胞など細胞回転が早くDNA合成の盛んな細胞で高い。この性質を利用し各種悪性腫瘍の細胞増殖の状態、治療効果判定などの指標として用いる。臨床的には各種悪性腫瘍、ウイルス感染症で高値になるが疾患特異性はない。 【染色体分析】 t(8;14)がみられればバーキットリンパ腫型ALL。t(9;22)がみられればPh陽性ALLである。 【予後因子】 予後良好因子:年齢3~7歳、白血球数25,000/μL未満、FABL1形態、染色体数が50をこえt(12;21)を伴う白血病細胞核型、診断時に中枢神経系病変がない。予後不良因子:高年齢の成人、白血病細胞核系の染色体数は正常であるが形態が異常である(偽性2倍体)、フィラデルフィア染色体がみられる、表面免疫グロブリンまたは細胞質免疫グロブリンを有するB細胞免疫表現型。 |
検体検査以外の検査計画 | 胸部X線検査、頭部CT検査、MRI検査、腹部超音波検査 |