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疾患解説

フリガナ キュウセイコツズイセイハッケツビョウ
別名 急性白血病
臓器区分 血液・造血器疾患
英疾患名 Acute Myeloid Leukemia(AML)
ICD10 C92.0
疾患の概念 骨髄前駆細胞が、単クローン性に自律的に増殖する血液腫瘍性疾患で、骨髄有核細胞の30%以上が芽球で占められる。芽球は骨髄を占拠し正常造血を抑制すると共に、末梢血にも出現し、各種臓器に浸潤する。造血の抑制は赤血球、顆粒球、血小板の絶対数減少を来し、出血や感染症などで患者を死に至らしめる。種々の遺伝子発現調節異常が発症に関与している。AMLは成人に最も多く見られる急性白血病で、発症率は年間10万人当たり4人である。発症年齢は加齢とともに上昇し、発症時の年齢中央値は60歳と高齢者が増加しつつある。染色体異常がよくみられ、分析により予後の判定と治療法選択の指標となる。病因は遺伝、放射線、化学薬品もしくはその他の物質への暴露、治療薬などが挙げられている。AMLは、形態、免疫表現型および細胞化学によって1.骨髄球性2.骨髄単球性3.単球性4.赤血球系5.巨核球系の5種類の亜型に区別される。
診断の手掛 AMLの患者が受診するきっかけとなる自覚症状は、造血障害を疑わせる貧血、易感染性、出血傾向(約5%)に加え易疲労感(約50%)、発熱(約10%)、全身倦怠感、体重減少、頻脈などである。AML患者の発熱は、好中球減少に伴う細菌性感染症の合併によることが多いが、白血病細胞の増殖による腫瘍性発熱(tumor fever)も時に見られる。また、急性前骨髄性白血病では、白血病細胞から放出される組織因子やプロテアーゼによって誘発される播種性血管内凝固症候群は必発である。半数の患者は、白血病と診断される3ヶ月若しくはそれ以前から症状を持っているので詳細な問診が大切である。
主訴 易感染性|Susceptibility to infection
息切れ|Shortness of breath/Breathlessness
易疲労感|Fatigue
肝腫大|Hepatomegaly
胸骨殴打痛|Percussion tenderness of sternum
骨痛|Osteodynia/Bone pain/Ostalgia
歯肉出血|Gingival bleeding/Ulorrhagia
紫斑|Purpura
出血傾向|Bleeding tendency/Hemorrhagic diathesis
全身倦怠感|General malaise/Fatigue
体重減少|Weight loss
点状出血|Petechiae
発熱|Pyrexia/Fervescence/Fever
脾腫|Splenomegaly
貧血症状|Anemic symptom
頻脈|Tachycardia
鼻出血|Nosebleed/Nasal hemorrhage/Epistaxis
やせ|Weight loss
リンパ節腫脹|Lymphadenopathy
鑑別疾患 Ph1陽性急性リンパ性白血病
急性混合性白血病
骨髄異形成症候群|Myelodysplastic Syndrome
骨髄線維症|Myelofibrosis
骨髄増殖性疾患
再生不良性貧血|Aplastic Anemia
慢性骨髄性白血病|Chronic Myeloid Leukemia(CLM)
スクリーニング検査 Albumin|アルブミン [/S]
Alkaline Phosphatase|アルカリホスファターゼ/アルカリ性ホスファターゼ [/WBC, /S, /WBC]
Alanine Aminotransferase|アラニンアミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ [/S]
Activated Partial Thromboplastin Time|活性化部分トロンボプラスチン時間 [/P]
Aspartate Aminotransferase|アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ/グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ [/S]
Basophils|好塩基球 [/B]
Calcium|カルシウム [/S, /U]
CEA|癌胎児性抗原 [/S]
Cholesterol|総コレステロール/コレステロール/コレステリン [/S]
Creatine Kinase|クレアチンキナーゼ/クレアチンホスホキナーゼ [/S]
Creatinine|クレアチニン [/S]
Eosinophils|好酸球 [/B]
Ferritin|フェリチン [/S]
Fibrinogen|フィブリノゲン/凝固第I因子 [/P]
Glucose|グルコース/血糖/ブドウ糖 [/CSF]
Hematocrit|ヘマトクリット/赤血球容積率 [/B]
Hemoglobin|ヘモグロビン/血色素量 [/B]
Immunoglobulin G|免疫グロブリンG [/S]
Iron|鉄/血清鉄 [/S]
Lactate Dehydrogenase|乳酸デヒドロゲナーゼ [/S]
Leukocytes|白血球数 [/B, /B]
MCH|平均赤血球ヘモグロビン量 [/B]
MCV|平均赤血球容積 [/B]
Monocytes|単球 [/B]
Neutrophils|好中球 [/B, /B]
Platelets|血小板 [/B, /B]
Potassium|カリウム [/S, /U]
Protein-Total|総蛋白/血清総蛋白/血清蛋白定量 [/CSF, /PlF, /U]
Prothrombin Time|プロトロンビン時間 [/P]
Rheumatoid Factor|リウマチ因子測定/RAゼラチン凝集反応/リウマチ因子定量 [/S]
Sodium|ナトリウム [/S]
Urea Nitrogen|尿素窒素 [/S]
Uric Acid|尿酸 [/S, /U]
α1-Globulin|α1-グロブリン [/S]
α2-Globulin|α2-グロブリン [/S]
β-Globulin|β-グロブリン [/S]
γ-Globulin|γ-グロブリン [/S]
異常値を示す検査 6-Hydroxymethylpterin [/U]
Acetyl-N-Ser-Asp-Lys-Pro [/S]
Acetylspermidine [/U]
Adenosine Deaminase|アデノシンデアミナーゼ [/S, /WBC]
Aldolase|アルドラーゼ/アルドラーゼアイソザイム [/S]
Alkaline Phosphatase, Placental Isoenzyme|胎盤型アルカリホスファターゼ [/S]
Angiotensin-converting Enzyme|アンギオテンシン変換酵素 [/S]
Anticardiolipin Antibodies|抗リン脂質抗体/抗PL抗体/抗カルジオリピン(CL)抗体/ループスアンチコアグラント(LA)/リン脂質抗体 [/S]
Antinuclear Antibodies|抗核抗体 [/S]
Arylsulfatase [/S]
CD8+ Lymphocytes [/B]
Cells [/Bone Marrow, /CSF]
Copper|銅 [/S]
Creatine Kinase BB-Isoenzyme|CK-BB [/S]
Erythropoietin|エリスロポエチン [/S]
Factor V|第V因子活性/不安定凝固因子/プロアクセレリン/Acグロブリン [/P]
Factor VIII|第VIII因子活性/抗血友病因子 [/P]
Fibrin and Fibrinogen Degradation Products|フィブリン・フィブリノゲン分解産物/線維素分解産物 [/P]
Fibrinopeptide A|フィブリノペプタイドA [/P]
Glycosyltransferase H Enzyme [/S]
Granulocyte Colony Stimulating Factor|顆粒球コロニー刺激因子 [/S]
Granulocyte-Macrophage Colony Stimulating Factor|顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 [/S]
Hemoglobin F|ヘモグロビンF/胎児性ヘモグロビン/胎性ヘモグロビン [/B]
Hepatocyte Growth Factor|肝細胞増殖因子 [/S]
Heterophil Antibody|異好抗体 [/S, /S]
Hexosamines, Protein-bound [/S]
Hexoses, Protein-bound [/S]
Interferon-γ|インターフェロン-γ [/S]
Interleukin-6|インターロイキン-6 [/S]
Interleukin-8|インターロイキン-8 [/S]
Laminin|ラミニン [/S]
Lysozyme|リゾチーム/ムラミダーゼ/ムコペプタイド/グリコヒドロラーゼ [/S, /S, /U]
Manganese Superoxide Dismutase [/S]
Myeloperoxidase|ミエロペルオキシダーゼ抗原/MPO抗原 [/Granulocyte]
N-Acetyl-Glucosaminidase|N-アセチルβ-D-グルコサミニダーゼ活性(尿)/尿中NAG活性 [/WBC]
N-Acetyl-Glucosaminidase B [/WBC]
N-Acetylputrescine [/U]
Naphthol-As-D-Chloroacetate Esterase [/Granulocyte]
Neopterin|ネオプテリン [/S, /U]
Perchloric Acid Soluble Protein [/S]
Phosphoglucomutase|ホスホグルコムターゼ [/S]
Phospholipase A|ホスホリパーゼA [/S]
Plasminogen|プラスミノゲン活性 [/P]
Plasminogen Activator Inhibitor-1|プラスミノゲンアクチベータインヒビター-1 [/P]
Protein Z|プロテインZ/プロテインゼット [/P]
Purine Nucleoside Phosphorylase [/Lymphocytes]
Reticulocytes|網赤血球/レチクロサイト/網状赤血球数 [/B, /B]
Soluble c-kit Molecule [/S]
Soluble Intercellular Adhesion Molecule-1|可溶性ICAM-1/可溶性CD54/細胞接着分子-1 [/S]
Soluble Interleukin-2 Receptor|可溶性 IL-2レセプター/IL-2レセプター/可溶性 IL-2受容体 [/S]
Soluble Interleukin-3 Receptor [/S]
Soluble L-Selectin|可溶性L-セレクチン/可溶性CD62L/可溶性LECAM-1/可溶性白血球内皮細胞接着分子-1 [/S]
Soluble Urokinase Receptor [/S]
Thrombin Time|トロンビン時間 [/B]
Thymidine Kinase [/S]
Tissue Factor Antigen|組織因子/組織トロンボプラスチン [/P]
Tissue Plasminogen Activator Antigen [/P]
Tumor Necrosis Factor-α|腫瘍壊死因子-α [/S]
Urokinase Plasminogen Activator|ウロキナーゼプラスミノゲンプロアクチベータ [/P]
Vitamin B12|ビタミンB12/コバラミン/シアノコバラミン [/S]
Vitamin B12 Binding Capacity|ビタミンB12結合能 [/S]
Zinc|亜鉛 [/S]
α-Mannosidase [/WBC]
α1-Acid Glycoprotein|α1-酸性糖蛋白/オロソムコイド/α1アシドグリコプロテイン [/S]
α1-Antichymotrypsin|α1-アンチキモトリプシン [/S]
α1-Antitrypsin|α1-アンチトリプシン [/S]
α2-Macroglobulin|α2-マクログロブリン [/S]
α2-Plasmin Inhibitor [/P]
β2-Microglobulin|β2-ミクログロブリン/β2-マイクログロブリン [/CSF]
関連する検査の読み方 【CBC】
汎血球減少症と末梢血中に芽球をみたら急性白血病を強く疑う。末梢血液塗抹標本中の芽球は90%近くになる。
【FAB分類 M0】
芽球は大型で顆粒を待たない。L2稀にL1リンパ芽球様。ペルオキシダーゼ染色陰性。ミエロペルオキシダーゼ陽性率3%未満。CD13、CD33の一方か両方陽性。
【FAB分類 M1】
芽球の3%以上がペルオキシダーゼ染色陽性。赤芽球以外の有核細胞の90%は芽球でAuer小体を認めることがある。分化した顆粒球系細胞は赤芽球以外の有核細胞の10%以下。
【FAB分類 M2】
I型とII型の芽球が非赤血球成分の30~90%を占め、しばしばAuer小体を持つ。8:21染色体転座例では、しばしば性染色体を失う。
【FAB分類 M3】
殆どの症例で芽球は30%以下。粗大なアズール好性顆粒と多数のAuer小体を持つ。15:17染色体転座がある。末梢血中の白血病細胞は5,000~10,000/μL程度。
【FAB分類 M4】
骨髄単球性芽球が赤芽球以外の有核細胞の30%以上を占め、うち2~80%以上は骨髄系、20~80%以上は単球系。好酸球増加を伴うM4はM4E。
【FAB分類 M5】
単芽球、前単球と単球が赤芽球以外の有核細胞の80%以上。M5aは未分化型、M5bは分化型。
【FAB分類 M6】
骨髄中の赤芽球は50%を超え異形成を認める。芽球は赤芽球以外の有核細胞の30%以上。
【FAB分類 M7】
芽球が30%以上でL1、L2の芽球形態を示す。ペルオキシダーゼ染色、ズダンブラックB染色陰性。
【染色体検査】
t(8;21)(q22;q11),inv(16)(p13.1q22)またはt(16;15)(p13.1;q22),t(15;17)(q22;q21)染色体が存在すれば芽球と無関係にAMLと診断できる。また、t(15;17)(q22;q21)染色体異常があるAMLは急性前骨髄白血病に分類される。
【遺伝子変異】
AMLに認められる遺伝子変異としては、NPM1遺伝子変異、CEBPA遺伝子変異、FLT3遺伝子変異、KIT遺伝子変異、MLL-PTD遺伝子変異の頻度が高い。
【major BCR-ABLキメラmRNA】
キメラmRNAが検出される。この検査は白血病細胞から抽出したRNAを使い、major BCR-ABLキメラmRNAの有無を調べるものである。major BCR-ABLキメラmRNAが検出されれば、BCR遺伝子領域内が切断されABL遺伝子と融合し、白血病の発病に関与していることが証明される。これにより、癌遺伝子の変異が直接検出され癌の病因診断が可能となる。臨床的には慢性骨髄性白血病や急性リンパ性白血病の治療後に残存する微小病変(細胞)の追跡、CMLやALL細胞の特異的高感度マーカーとして用いる。
【TdT活性】
AMLでは高値を示さないのでALLとの鑑別に有用である。TdTはDNA合成酵素で殆どが胸腺皮質リンパ球とリンパ芽球様細胞に存在する。また、悪性のpre B細胞、pre T細胞と白血病細胞にも見られる。臨床的にはリンパ性の腫瘍性疾患、急性リンパ球白血病、慢性骨髄性白血病の急性リンパ球性転化細胞などの診断に用いる。特にALLでは90%に認められる。
【WT1 mRNA】
AMLの微小残存病変のモニタリングに用いる。WT1遺伝子はWilmus腫瘍の原因遺伝子の一つとして単離された。この腫瘍はWT1遺伝子の欠損や突然変異がみられる。この遺伝子は白血病や種々の固形癌に高率に発現している為、これら疾患の診断に用いる。
【エステラーゼ染色】
エステラーゼ染色は細胞に特異的エステラーゼ染色と非特異的エステラーゼ染色の二重染色をすることで、顆粒球系細胞と単球系細胞を分類するものである。特異的エステラーゼ染色では顆粒球細胞は強陽性に染色されるが、単球系細胞は陰性である。一方、非特異的エステラーゼ染色では顆粒球は陰性だが、単芽球、前単球、単球、血小板は強陽性に染色される。臨床的にはこの染色の違いを利用して、急性骨髄単球性白血病(M4)、単球性白血病(M5)の単芽球の同定を行う。また、急性白血病のM2とM4、M5の鑑別に利用される。
【血液細胞核酸増幅同定】
造血臓器腫瘍型の確定診断と治療効果判定に用いる。
【骨髄像】
骨髄中の芽球は30~95%である。
【血液像】
2分葉以上の好中球は認められない。
【ペルオキシダーゼ染色】
芽球の3%以上が陽性である。ペルオキシダーゼ染色は細胞内の酵素ペルオキシダーゼを染色で分別する方法で、顆粒球系・単球系細胞では陽性、リンパ球系細胞は陰性になるので急性骨髄性白血病と急性リンパ性白血病の鑑別、球性白血病の分類、先天性ミエロペルオキシダーゼ欠損症の診断に用いる。異常値を認めたらエステラーゼ染色、TdT活性値、表面マーカー、遺伝子解析などを行う。
【デオキシチミジンキナーゼ活性】
著明に増加する。TKは細胞のDNA合成期に上昇するため、細胞再生、ウイルス感染細胞など細胞回転が早くDNA合成の盛んな細胞で高い。この性質を利用し各種悪性腫瘍の細胞増殖の状態、治療効果判定などの指標として用いる。
【マーカー】
ミエロペルオキシダーゼ染色、CD33、CD13、CD41、グリコフォリンA
【尿沈渣】
時として尿中に白血病細胞を認める。
検体検査以外の検査計画 胸部X線検査、頭部CT検査、MRI検査、腹部超音波検査
疾患

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